2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2016年11月15日号のレビュー/プレビュー

アニッシュ・カプーア個展

会期:2016/09/09~2016/10/15

SCAIザ・バスハウス[東京都]

入って正面の壁にあるのが球体のミラー。左右を貫く穴が開いているのだが、それがどういう曲面をしているのか、妙な見え方をする。思わず手を入れて確かめたくなるが、「手を入れないでください」との注意書きが。壁のコーナーにも球体ミラーがあるが、これも中央が歪んでいて、どうなっているのやら。奥の部屋には建築的プロジェクトのマケットが4つ並んでいる。ひとつは立方体と球体が隣り合わせになり、立方体から球体の内部をのぞき、ひとつは球体の中心部まで通路が延び、中心から全方位を見る仕掛け。あと2つは上下左右に設けた楕円球の内部をのぞくようになっている。どれもが錯覚を用いたトリックアートと言えばそれまでだが、きわめて精度の高いので見惚れてしまう。

2016/10/07(金)(村田真)

坂本和也「Between Breaths」

会期:2016/09/30~2016/10/29

nca[東京都]

150号を3枚つなげた超大作《Landscape gardening》を中心に、ジャングルを思わせる濃密な緑の絵画が16点。よく見ると2種類あって、ひとつは《Landscape gardening》に代表されるように枝、葉などをはっきり描き分けた具象的植物画、もうひとつは手前にある《Imbalance》のように、ナイフでコテコテ塗りたくった表現主義的抽象だ(加えてその中間に位置する作品もある)。前者はほとんどオールオーバーだが、気をつけて見ると、例えば《Day by Day》は四辺に沿って黄緑色の枝または蔦がはい、矩形の画面を補強しているのがわかる。画面に対する意識がきわめて高い。

2016/10/07(金)(村田真)

岡山芸術交流2016

会期:2016/10/09~2016/11/27

旧後楽館天神校舎跡地+岡山県天神山文化プラザ+岡山市立オリエント美術館ほか[岡山県]

各地で国際展や芸術祭が激増している。増えるのは悪いことではないが、問題は優れたアーティストやキュレーターは限られているので、被ってしまうこと。結果どこも同じような顔ぶれ、似たような作品が並ぶことになる。そもそも国際展や芸術祭はほかとの差異化を図り、独自性を打ち出さなければ意味ないのに、横並び体質の行政が主導するとどうしても均質化してしまうのだ。これでは見に行く気がしない。そんななか、ぜひ見に行きたいと思ったのが「岡山芸術交流」だ。なぜ見に行きたいかというと、まず第一に行政主導ではなく、岡山の実業家でコレクターの石川康晴氏が主導していること。第二に、そのためキュレーターもアーティストもほかとあまり被っておらず、独自性を発揮できていること。第三に、作品の多くはわかりやすい絵画や彫刻ではなく、見る者に「芸術とはなにか」を考えさせる広義のコンセプチュアルアートであることだ。だからとっつきにくいかもしれないが、近ごろの住人や観客にこびたようないわゆる「地域アート」よりずっといい。
参加作家は31組で、日本人は4人だけ。多少とも名を知られているアーティストはフィッシュリ&ヴァイス、ピエール・ユイグ、ジョーン・ジョナス、リクリット・ティラヴァーニャ、ローレンス・ウェイナー、眞島竜男、島袋道浩くらい。アーティスティックディレクターを務めるリアム・ギリックともども、大半が無名のアーティストなのだ。その姿勢は潔い。ただし出展作品は、アーティストが来日してつくった新作ばかりというわけにはいかず、3分の1は石川氏のコレクションから出ているという。じつは個人的に一番おもしろかったのは、これら旧作を使ったオリエント美術館での展示。モザイク画の隣に赤いミニマル絵画を展示したり(ロバート・バリー)、古代遺物の上方にパンダとネズミのぬいぐるみを吊るしたり(フィッシュリ&ヴァイス)、美術館側もよくやらせたもんだと感心する。ほかにも、銀色に輝く彫刻が駐車場跡地に軟着陸したようなライアン・ガンダーの《編集は高くつくので》や、武器としての弓が弦楽器の弓に変化していく過程を映像化した島袋の《弓から弓へ》が強い印象を残した。どちらもとぼけた外観の内に強いメッセージ性が読み取れる作品だ。やっぱり国際展=芸術祭はこうでなくっちゃ。

2016/10/08(土)(村田真)

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BODY/PLAY/POLITICS ─カラダが語りだす、世界の隠された物語─

会期:2016/10/01~2016/12/14

横浜美術館[神奈川県]

身体をキーワードとしており、埼玉県立近代美術館と似たようなテーマの展覧会だが、こちらはむしろアジアの各地で活動する作家を招聘し、それぞれの地域の文脈を語る。が、日本とは環境が異なるだけに、作品にややとっつきにくい面があったことは否めない。やはり、石川竜一の展示で紹介されていた、小さいおじさんとグッピーの写真とエピソードがずしんと来る。彼が書いたテキストもなかなか読ませる。常設では、絵画に描かれた横浜の特集展示だった。近代から現代まであるが、いずれも実際の場所と照合しながら見ると、さらに楽しめる。

2016/10/10(月)(五十嵐太郎)

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塩田千春 鍵のかかった部屋

会期:2016/09/14~2016/10/10

KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ[神奈川県]

塩田千春「鍵のかかった部屋」@KAATの最終日に駆け込む。ヴェネツィア・ビエンナーレ美術展2015の日本館の凱旋帰国展示的な位置づけを持つ。ただし、船はなく、鍵の数はだいぶ減らしている。空間に対応して鏡や照明があるなか、複数のドアが設置され、糸に囲まれた空間が出現しており、ヴェネツィアとは異なる新バージョンになったと言えるだろう。ちなみに、西洋に比べて、日本製の鍵は全然絵にならない。

2016/10/10(月)(五十嵐太郎)

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2016年11月15日号の
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