2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2016年11月15日号のレビュー/プレビュー

動き出す!絵画 ペール北山の夢 ─モネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち─

会期:2016/09/17~2016/11/06

東京ステーションギャラリー[東京都]

美術雑誌や翻訳本の出版や展示などメディアの側面から、日本の近代美術の発展を支えたペール北山を中心に据えながら、日本における印象派の受容をたどる。教科書的とも言える流れだが、知らない作家も多くいて勉強になった。なによりも、数年間、集中的に美術にかかわった北山が、今度は国産初のアニメに着手し(展覧会のタイトルはこれに由来する)、およそ100年前に制作した3つの短編映像を鑑賞できたのが最大の収穫だった。

2016/10/01(土)(五十嵐太郎)

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第3回代官山フォトフェア

会期:2016/09/30~2016/10/02

代官山ヒルサイドフォーラムほか[東京都]

写真作品を扱うギャラリー、書店・出版社から成る日本芸術写真協会(FAPA)が主催する「代官山フォトフェア」も3回目を迎えた。今年の目玉は、写真史家の金子隆一のコレクションから厳選して展示した「The Photobook」展(ヒルサイドプラザ)。「1960年代以降、世界の中でも独自の変遷を遂げてきた日本の写真集を、総合的に紹介する」展覧会である。たしかにこのところ、日本の写真集に対する関心は世界的に高まりを見せており、時宜を得た好企画といえる。
会場には、小石清『初夏神経』(1933)、川田喜久治『地図』(1965)、荒木経惟『センチメンタルな旅』(1971)などの極めつきの名作写真集のほか、元村和彦が主宰していた邑元社から刊行されたロバート・フランク『私の手の詩』(1972)などの写真集のコーナー(装丁・デザインは杉浦康平)、コロタイプ、グラビア、オフセットなど、印刷システムの違いによる視覚的効果を比較するコーナーなどがあり、充実した内容だった。この展示に限らず、「写真集の展覧会」は、もっといろいろな角度から企画できるのではないだろうか。
代官山フォトフェアでは、FAPA bookとして毎回写真集を刊行している。石内都『Belongings 遺されたもの』、荒木経惟『去年の写真』に続いて、今年は川田喜久治『遠い場所の記憶:1951-1966』が出版された。それに合わせた企画展には、なかなか見ることができない川田の1950~60年代の初期作品が展示されており、東松照明の同時代の作品との比較も含めて興味深い内容だった。川田の旺盛な実験精神が、この時期からすでに芽生えていたことがわかる。ほかに横田大輔、小林健太、志賀理江子らによるトークセッションなど、多彩な催しが行なわれた。天候不順で、観客数は期待されたほどは伸びなかったようだが、昨年と比較しても意欲的な展示・イベントが多かった。東京都写真美術館もリニューアル・オープンしたこともあり、代官山・恵比寿地区全体を巻き込んで、より規模の大きな写真フェスティバルとして展開していけるといいと思う。

2016/10/01(土)(飯沢耕太郎)

ポーラ美術館コレクション モネからピカソ、シャガールへ

会期:2016/09/17~2016/11/13

宮城県美術館[宮城県]

ポーラ美術館のコレクションで構成されており、日本人が大好きな印象派とその直後を扱う。これもやはり教科書的なセレクションだが、作品の解説がちゃんと書かれているので、学習にはいいかもしれない。常設のエリアでは、具体美術協会の作家たちを特集している。前半のアクションペインティング系の絵画を壁に掛けず、床置きで鑑賞すると面白いかもしれない。

2016/10/02(日)(五十嵐太郎)

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アート・ノード・ミーティング01 てつがくカフェ「アートは心地よいもの?」

会期:2016/10/02

せんだいメディアテーク[宮城県]

せんだいメディアテークへ。仙台で新しく始まる芸術祭とは違う形式を模索するアートノード・プロジェクトのアドバイザー会議に出席する。仙台在住のいがらしみきおの漫画を大胆に表紙で使うジャーナル0号も完成していた。終了後、館長の鷲田清一によるアートノード・ミーティングに参加する。いわゆる一方的なレクチャーではなく、オーディエンスの参加をうながしながら、2時間超の議論を成立させる、てつがくカフェの形式を初めて経験したが、意外に多くの発言を引き出すことができるものだと感心した。ちなみに、設定された議論のテーマは、「アートは心地よいもの?」で、これも多様な反応を生み出しており、絶妙な設定だった。

2016/10/02(日)(五十嵐太郎)

黄金町バザール2016 アジア的生活

会期:2016/10/01~2016/11/06

黄金町+日の出町など[神奈川県]

韓国、中国、タイなどからのアーティストも交えて40作家以上が参加。2つだけ書いておきたい。ひとつは、渡辺篤の《あなたの傷を教えて下さい。》。インターネットを通じて心の傷を募り、円形のコンクリート板にその傷についてのコメントを書いて割り、金継ぎで修復する(傷を癒す)。例えば「女の子に生まれてしまった」「評論家にレイプされた。君がTwitterで暴露しても無駄だよと言われた」「私は愛していない人と結婚した。お互いに愛し合っていないから、罪の意識もない」とか。これらの作品もいいけど、会場となった「チョンの間」の壁を斜めに横切る線や、床にまき散らしたコンクリート片といったインスタレーションがすばらしい。もうひとつは、岡田裕子の《Right to Dry》。黄金スタジオの通路に数百枚の洗濯物を干している。ただそれだけ。「幸福の黄色いハンカチ」ならぬ「幸福の洗濯物」。こういうの好きだ。

2016/10/02(日)(村田真)

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