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2016年12月15日号のレビュー/プレビュー

BankARTスクール2016 鎌田友介・加藤直樹「シェアスタジオ旧劇場について」

会期:2016/11/03

BankART Studio NYK[神奈川県]

横浜建築家列伝において、最年少となるアーティストの鎌田友介と建築家の加藤直樹をゲストに迎える。彼らがハンマーヘッドスタジオで知り合い、ストリップ劇場をリノベーションしたシェアスタジオ「旧劇場」を拠点とした経緯を語ってもらう。ハンマーヘッドスタジオ出身のクリエイターで、ほかにあまりそうした事例はないようだ。そして加藤からはインテリアのプロジェクト、鎌田からは空襲やアントニン・レーモンドなど、建築の記憶をアートに昇華した作品が紹介された。

2016/11/03(木)(五十嵐太郎)

中村征夫写真展「琉球 ふたつの海」

会期:2016/10/29~2016/11/24

コニカミノルタプラザ ギャラリーB/ギャラリーC[東京都]

中村征夫といえば、1988年に第13回木村伊兵衛写真賞を受賞した「全・東京湾」、「海中顔面博覧会」の両シリーズなど、水中写真の第一人者として知られている。海中の生きものたちの不思議な生態を、華麗なカラー写真で写しとった写真の人気は、いまなお高い。ところが一方で、中村がモノクロームのドキュメント写真を粘り強く撮り続けてきたことは、あまり知られていないのではないだろうか。その代表作としては、南の島の風土とそこに住む人々の暮らしを柔らかな眼差しで捉えた写真集『熱帯夜』(小学館、1998)がある。今回、コニカミノルタプラザで開催された「琉球 ふたつの海」の出品作「遥かなるグルクン」も、その系譜に連なるものだ。
日経ナショナルジオグラフィック社から同名の写真集も刊行されているこのシリーズで、中村が30年にわたって記録し続けたのは、沖縄の漁師(ウミンチュ)たちのアギヤーと呼ばれる追い込み漁である。小舟(サバニ)を操り、袋網にグルクンのような熱帯魚を追い込んでいく伝統的な漁法も、高齢化や環境異変による漁獲高の減少などにより、いまや続けられるかどうかぎりぎりの状況になりつつある。本作は、いかにも中村らしい、海中から漁の様子を撮影したダイナミックなカットを含めて、モノクロームの力強い表現力を活かした力作だった。やはり日経ナショナルジオグラフィック社から、同時期に写真集が刊行された、撮り下ろしカラー作品の「美ら海 きらめく」とのカップリングも、とてもうまくいっていた。
ところで、前身の小西六フォトギャラリー、コニカプラザの時代から換算すると、60年以上もの長期にわたる活動を続けてきたコニカミノルタプラザは、2017年1月23日でその歴史を閉じることになった。本展が特別企画展としては最後のものになる。2006年にコニカミノルタが写真・カメラ事業から撤退してからも、写真展を開催し続けてきたのだが、これ以上の継続はむずかしいという判断が下されたようだ。残念ではあるが、長年にわたる写真界への貢献は特筆に値する。

2016/11/04(飯沢耕太郎)

藤森照信《多治見市モザイクタイルミュージアム》

[岐阜県]

多治見のモザイクタイルミュージアムへ。とぼけた輪郭と極小窓とすり鉢外構でぐいっと心をつかむ。洞窟風の階段を上ると、風呂場タイルなどの屋外展示に、なぜかクラシック(パッヘルベルのカノン等)が流れ、なんともキッチュである。一方、室内や裏側は割と普通のデザインだ。ともあれ、つい触りたくなる藤森建築はモザイクとの相性もよく、観光バスが訪れるほど、集客に大成功していた。

2016/11/04(金)(五十嵐太郎)

ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞

会期:2016/09/10~2016/12/11

名古屋ボストン美術館[愛知県]

風景画の広重に対し、ヤンキーバロックというべき国芳と肖像画の名手である国貞の2人に焦点をあてた企画。それぞれの絵の情報力が多く、鑑賞するのに意外と時間がかかる(英訳のタイトルの方がわかりやすいことも)。衣服の紋様も、画中画として機能している。とりわけ、国芳の動的な構図は、いまなら映画監督になれる資質だろう。

2016/11/04(金)(五十嵐太郎)

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アルバレス・ブラボ写真展 メキシコ、静かなる光と時

会期:2016/11/03~2016/12/18

名古屋市美術館[愛知県]

ほぼ20世紀の100年を生きたメキシコの巨匠の回顧展である。モダニズムやアジェの影響を受けて出発するが、特にシュルレアリスム的な感覚も入る作品群が魅力的だった。リベラ、カーロらの同時代人も多く撮影している。また常設展示では、同館のメキシコ美術のコレクションと連動させ、企画展を補完していた。

2016/11/04(金)(五十嵐太郎)

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2016年12月15日号の
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