2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2016年12月15日号のレビュー/プレビュー

石川竜一「okinawan portraits 2012-2016」

会期:2016/10/18~2016/11/12

The Third Gallery Aya[大阪府]

入れ墨、ヤンキーやゴスロリ、異性装者。あるいは都市に生息し、化粧や服装がどこか周囲から浮いて奇異に感じられる人。そうした雑踏の中で特異な存在感を放つ被写体に正面から向き合って撮った、力強いポートレイトで注目される写真家・石川竜一の個展。同名タイトルの写真集が赤々舎から刊行されている。
本展では、これまで発表してきたポートレイト群からの過渡的な移行が4点にわたって見られた。1点目は、画面のフォーマットが正方形から長方形へ変化したこと。それに伴い、2点目として、空間的奥行きへの意識が生まれたこと。以前は、被写体の個性を前面に押し出したポートレイト主体の写真だったが、人物の背後の空間を意識したレイヤー構造が生まれている。例えば、画面手前でストロボの光を浴びて笑う、ロリータファッションの若い女性と、背後の暗闇に沈むホームレスとの対比。女物のキャミソールを身につけ、こちらへ射抜くような眼差しを向ける中年男性の背後では、マリリン・モンローの巨大な看板が微笑んでいる。あるいは、2人組の女子高生の横には、地面に激突したような格好で無残に倒れた陸橋と「歩行者注意」の文字が赤く光る看板が並び、日常風景に異様な裂け目を見せている。このように、人物だけでなく、風景が抱える奇妙さや歪み、綻びのようなものも石川の眼差しの射程に入ってきており、3点目として風景のみの写真の出現とも結びつく。それらはとりたててショッキングな風景ではないが、例えば、明るい陽射しを浴びて広い芝生に建つモダンな平屋建ての建物は、よく見ると扉や窓が破れて室内も荒れている。立地や建築の特徴から米軍関係のものと思われるが、どこか不穏さをかきたてる光景だ。そして4点目として、単体のポートレイトの中に「2人組」が出現し、人物を「あるグループの類型」として捉える視線が生まれている。ごく普通の女子高生や中年男性もいれば、夜の街で客引きする女性たち、化粧が白浮きした顔にギョッとさせられる中年女性たちもいる。路上から捉えた「沖縄の今」の並列的なカタログ化が試みられていると言えるだろう。
こうした変化はさらに今後、「沖縄写真」の新たな面を切り開くシリーズとして結実していくのではないだろうか。それは、日本の地方都市に漂う、平凡さとダサさをどうしようもなく抱え込んだバナキュラーな性質に対して、沖縄という場所が持つ共通性と特異性をあぶり出していく作業でもある。またそれは、「琉球文化の古層が残る島」といった超歴史的・神話的な時間へのノスタルジー/基地闘争という政治的主題、といったイメージの二極から離れた「沖縄写真」の成立へと向けられている。

2016/11/10(木)(高嶋慈)

つくることは生きること 震災 《明日の神話》

会期:2016/10/22~2017/01/09

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

大災害に襲われたとき、アーティストになにができるのか。そのことが最初に問われたのは阪神淡路大震災のあとだった。その5年後の2000年、前年に開館したばかりの岡本太郎美術館は「その日に─5年後、77年後 震災・記憶・芸術」展を開いた(「77年後」とは関東大震災からの年月)。あれから16年、よりによって太郎生誕100年の年に起こった東日本大震災の5年後、同様の企画展を開くことになった。今度は想定外の原発事故が起こったため、核エネルギーのすさまじさを表現した太郎の巨大壁画《明日の神話》(下図)を中心にして。ここで「おや?」と思ったのは、朝日新聞にも書いたことだが(11/22夕刊)、原発事故に《明日の神話》とくれば、だれもが巨大壁画に原発事故の絵を付け加えたChim↑Pomを思い起こすはずなのに、出品作家にその名が見られないこと。ではだれが出品しているかというと、震災前から東北芸工大の教師と学生を中心に東北固有の絵画を追求している「東北画は可能か?」、津波でアトリエを流され、原発事故で家を追われた木彫家の安藤榮作、地元の被災地を淡々と撮り続ける写真家の平間至と映像作家の大久保愉伊、被災地に駆けつけアートで支援活動を行なう団体アーツフォーホープといった人たちだ。彼らの多くは東北出身か在住だが、震災に対しても原発事故に対しても声高に叫んだり批判したりすることなく、被災者に寄り添い、不気味といっていいほど静かにつくり続けている点で共通している。まさにタイトルのとおり「つくることは生きること」を実践しているのだ。

2016/11/10(木)(村田真)

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SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会

会期:2016/11/09~2016/11/20

スパイラルガーデン[東京都]

ベアリングを製造する日本精工株式会社の創立100周年を記念し、円形の吹抜けを見事に活用したエマニュエル・ムホーのインスタレーションのほか、ライゾマ、ナデガタ、石黒猛らが出品している。カタイ会社だが、その製品のイメージをうまくアートとデザインで表現した企画。なお、築30年越えのスパイラルも建築として改めて隅々まで見学すると、ほかの槇文彦による建築と同様、いまだよい状態である。

写真:左=上から、ナデガタ、エマニュエル・ムホー 右=エマニュエル・ムホー

2016/11/11(金)(五十嵐太郎)

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冨田勲 追悼特別公演 冨田勲×初音ミク「ドクター・コッペリウス」

会期:2016/11/11~2016/11/12

オーチャードホール[東京都]

第一部はミクと初共演となった「イーハトーブ交響曲」を演奏し、第二部が冨田の死去のために、一部未完に終わったコッペリウスを披露する。第一部と違い、リアルなバレエのダンサーとの共演だが、人間の視覚はかなり騙しやすいせいか、自然に感じられた。一方、ミクの身体なき声は、この世の感じではなく、不思議な聴覚体験だった。

2016/11/11(金)(五十嵐太郎)

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

会期:2016/11/11

[全国]

映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』を見る。前作『アウトロー』に比べると、主人公の独り者感をなくし、人と人の関係性の萌芽が生まれているが、同じくトム・クルーズが演じる「M:i」のシリーズとは真逆のローテク・アクションは健在だった。「スタートレック」の新作がウェルメイドだけど、映像を加工しすぎているために、あまり肉体を感じないのに対し、この映像は痛みが伝わる。

2016/11/11(金)(五十嵐太郎)

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