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2017年01月15日号のレビュー/プレビュー

豊島区新庁舎(としまエコミューゼタウン)

[東京都]

これまでは遠くからしか見ていなかったが、タワーマンションとの共同開発が話題になった、豊島区新庁舎を初めて訪れた。同じ隈研吾のプロジェクトでも、日本の地方都市に広場を成立させた長岡の庁舎は素晴らしい空間だったし、富山のキラリはゆったりとした興味深いインテリアだったが、ここの吹抜けは四方向からのアクセスがあるとはいえ、狭苦しくて、寂しい。土地が十分に使えない東京の開発の限界なのか、平日だともう少し賑わうのだろうか。また建物には人工の植栽を使っている場所もあり、「エコミューゼ」をうたう緑空間も微妙な感じだった。

2016/12/03(土)(五十嵐太郎)

フェスティバル/トーキョー16 ドキュントメント「となりの街の知らない踊り子」

会期:2016/12/01~2016/12/04

あうるすぽっと ホワイエ[東京都]

F/T2016のまちなかパフォーマンス・シリーズで、ドキュントメント「となり街の知らない踊り子」@あうるスポットホワイエ。北尾亘の激しく動き続けるダンスと、映像・テキスト演出の山本卓卓がぶつかりあう。劇場の手前になるホワイエの空間で、身体と投影された文字情報が対話するようなパフォーマンスを展開していた。

2016/12/03(土)(五十嵐太郎)

中目黒高架下

[東京都]

オープンして間もない中目黒高架下へ。駅を挟んで、新しいお店の連なりが住宅街まで延々と続く。ただ一番端になると、オフィスだったり、まだ空き物件で募集中だったから、これで完成ではなく、これからも成長するのだろう。かつてのガード下の飲み屋のイメージとはまるで違う、こじゃれた美味しい飲食店がいろいろと並び、多くの人が集まっていた。

2016/12/03(土)(五十嵐太郎)

改組 新 第3回日展

会期:2016/10/28~2016/12/04

国立新美術館[東京都]

まず日本画を見る。なんの感動も感想もない。洋画を見る。感動はないが、感想を少し。最初の部屋の壁一面に特選10点が並んでいるが、驚くことにすべて学生レベル。もっと悪いことに、学生ならまだ向上心があり、やり直しもきくけど、この方々はハナからやる気がなさそう。ありきたりの風景、人物、静物を無難に描いてるだけで、なんの野心も冒険も感じられない。いや、日展内で出世しようという野心はあるのかもしれないが、少なくとも芸術上の冒険精神はまるで感じられない。もちろん今回に限ったことではなく、毎度のことだが。そんななか、水墨画風フォトリアリズムの水彩画を出した山本浩之の《朝の雪》は、あまり見かけない画風で新鮮に感じた。

2016/12/03(土)(村田真)

柳根澤 召喚される絵画の全量

会期:2016/09/24~2016/12/04

多摩美術大学美術館[東京都]

朝日新聞で山下裕二氏が絶賛していたので、どんなもんかと思いつつ見に行った。最初はあまりピンと来なかったけれど、見ていくうちにジワジワと染み込んでくる。見れば見るほど染み込んでくる。ハズレはない。ほぼすべてド真ん中に入ってくる。こんな経験は何年ぶりだろう? 彼の絵はキャンバスに油彩やアクリルで描いた西洋画ではなく、韓国紙に墨やグワッシュ、テンペラを使ったいわゆる東洋画で、モチーフは公園の風景や室内、湖、林、テーブル、本棚、自画像など、ごくありふれたもの。そう書くとつまらない日本画を思い出すかもしれないが、逆にそれだけの要素でこれほど豊穣な絵画世界を開示してくれるところがスゴイのだ。もっとも、室内にゾウがいたり、湖に家や家具が浮かんでいたり、シュールなイメージは散見されるけれど、そんな奇妙なヴィジュアルで驚かすわけではない。おそらく室内にゾウがいるのは、シワだらけのゾウの足元に敷かれたしわくちゃの布団と関連しているだろうし、湖にごちゃごちゃしたものが浮かんでいるのは、湖面に映る背後のギザギザした岩肌と対置させたかったからに違いない。
もし彼の選ぶモチーフに特徴があるとすれば、こうしたゾウや布団のシワ、ギザギザの岩肌のほか、木々の葉、本棚に並んだ無数の本、何百何千もの石を積み上げた石垣といったフラクタルなありさまであり、それはとりもなおさず絵に描きにくいものばかりなのだ。例えば《Some dinner》は、さまざまな料理や食器の置かれたテーブルを描いているのだが、画面の半分は白い胡粉の滴りで覆われている。そこではごちゃごちゃした静物を描き出す喜びと同時に、絵具を存分に滴らせることの愉悦も感じているはずだ。《Some Library》は図書館の奥まった本棚を描いたものだが、同時に棚の水平線と本の垂直線の織りなすノイジーなリズムを表わそうとしているに違いない。これまでずいぶんたくさん絵を見てきたはずなのに、これこそ「絵」であり、これこそ「描く」ことなのだと、あらためて絵画の本質に触れてしまったような新鮮な気分になることができた。

2016/12/03(土)(村田真)

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