2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2017年01月15日号のレビュー/プレビュー

須藤絢乃写真展 てりはのいばら

会期:2016/11/09~2016/12/10

芦屋市谷崎潤一郎記念館[兵庫県]

少女漫画の登場人物を思わせるユニセックスな人物像や、プリクラやデコ文化に見られる変身願望を反映した写真作品で知られ、2014年には16人の行方不明の少女に扮した作品《幻影》で、キヤノン写真新世紀のグランプリを受賞した須藤絢乃。芦屋市谷崎潤一郎記念館で2度目の個展となる本展では、谷崎潤一郎の代表作『細雪』の4姉妹に自らが扮した作品6点を発表した。作品には、同館所蔵の谷崎の遺品や、かつて谷崎が住んでいた邸宅、船場育ちの須藤の祖母が大切にしてきた着物や小物も見られ、彼女が『細雪』を通して感じた阪神間モダニズムの時代と近代女性像が窺えた。作品はカラー写真だが、往年の総天然色映画あるいは初期のカラー写真の色調が採用され、時代を超越したマジカルな雰囲気に。和風のしっとりした世界観でも独自の作風が貫かれており、成長がしっかりと感じ取れた。なお、同館では今後も継続して須藤の個展をなう予定。次回の個展がいまから楽しみだ。

2016/12/10(土)(小吹隆文)

南極建築 1957-2016

会期:2016/12/09~2017/02/21

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

極寒の過酷な自然環境─ブリザードや雪の吹き溜まり─に耐えうる建築とは何か。本展は昭和基地を中心に、南極の建築物がどのように進化してきたかをたどる。その形成に寄与したのが建築資材や物資を運ぶ観測船で、その大型化が建築物の規模拡大に影響した。1957年に初めて設置された昭和基地は木質のプレファブ建築。住宅大手メーカーによるプレファブ工法が国内での販売へと展開してゆき、それが基地建設にも応用されていった時代背景を考えると面白い。気温がマイナス50度にも及ぶ現地で建材からの複雑な工事が必要なく、船で運んで組み立てるだけで使用ができるからだ。展示では、船の変遷とともに建築の形態と機能が発展してゆくさまを見ることができる。さらに観測隊員の現地での生活を想像しやすいようにと、日用品や装備を入れた、第一次隊の梱包用の木箱で展示用通路がつくられている。1957年から2016年まで5期にわたる歴代の建築物を通覧すると、基地の形状自体がもつ魅力にも気付く。近未来的な造形もあり、見ていると面白い。映像資料も工夫されているので、南極における環境の実態と、当地での快適な居住性の追求に関わって知恵と実験を重ねてきた人々の営為について実感する。[竹内有子]

2016/12/10(土)(SYNK)

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大田区居住90年記念 川瀬巴水─大田区制70周年記念─

会期:2016/10/09~2016/12/25

大田区立郷土博物館[東京都]

昭和22年(1947年)、東京の旧35区が整理統合され東京23区となった。このとき、大森区と蒲田区が合併し大田区が誕生した。2017年は大田区生誕70周年の年ということで、大田区とゆかりの深い版画家・川瀬巴水(1883-1957)の作品の、昭和22年から絶筆となった「金色堂」まで、写生帖や順序摺を含む約80点を紹介する企画。巴水は大正15年(1926年)11月に大森新井宿子母澤に転居。昭和5年(1930年)には馬込に居を構えて亡くなるまでを過ごした。戦時中、那須塩原に疎開していた時期はあるが、巴水は39年間の版画制作活動のうち、31年間を大田区で展開したことになる。2016年は大田区に居住して90年目の年でもあるという。
巴水の代表作品、人気作品は関東大震災以降から昭和初期にかけてのものが中心で、展覧会でもその時期の作品が紹介されることが多い。それにも関わらず、大田区立郷土博物館が所蔵する約500点の巴水作品から、あえて代表的な作品群を外して戦後の作品に絞った今回の展示はなかなかマニアックな企画(それでも代表作のひとつで地元ゆかりの作品《馬込の月》(1930)は、本展とは別に「馬込文士村」コーナーに展示されていた)。「風景が版画に見えるようになった」と巴水は語っていたそうだが、じっさい何気ない風景が見事に絵になっている作品が多い。
終戦時、巴水は62歳。大田区が誕生した昭和22年には64歳。そこから昭和32年に74歳で没するまでの十数年間に制作された巴水作品には他の時期と比較してどのような特徴があるのか。清水久男(大田区立郷土博物館学芸員)によれば、それは関東大震災前の仕事への回帰だという。版元・渡邊庄三郎(1885-1962)が始めた新版画は関東大震災後に変容する。震災被害に遭った経営を立て直すために作品はマーケット──主として海外──の嗜好に沿うことが第一となった。すなわち色数が削加し、全体に明るく鮮やかな色調へと変化した結果、作品は「描きすぎてくどくなった」(巴水)。作品は海外によく売れたが、国内にあっては江戸の錦絵への接近、広重に似ていることへの批判があった。戦後はそうしたマーケットの縛りから外れて、ほんらい庄三郎が創りたかった版画、巴水が描きたかった作品に回帰した。その背景には、終戦直後には進駐軍にどんな作品でもよく売れた(そのため新版画には海外への土産物的作品が増えたという話もあるので、詳細は検討を要する)こと、庄三郎も巴水に自由に描かせたことがあるという。 ただし、それによって作品が良くなったかどうかについては、意見が分かれるようだ。西山純子(千葉市美術館学芸員)は「終戦を62歳で迎えた巴水の、以後の作品の多くが生彩を欠くのはやはり否めない」という(「川瀬巴水のこと」『川瀬巴水展──郷愁の日本風景』2013年11月、13頁)。震災以降、巴水作品のモチーフ、構図、色彩には大いに版元の手が入っている。戦後の作品が生彩を欠くとしたら、それは巴水の問題だったのか、それとも版元の問題だったのか。あるいは欧米人好みで国内においては批判された震災後新版画が、現代の日本において高く評価されていることをどのように考えたらよいのか。
川瀬巴水生誕130年の2013年から翌年にかけて大田区立郷土博物館や千葉市美術館などで開催された展覧会で巴水の人気はこれまで以上に高まっているようだ。人を呼べる企画だという判断があったのだろうが、3期にわたって約500点が出品された前回の回顧展では無料だった入館料が有料になってしまった。一般500円という観覧料は同種の展覧会と比較すると妥当かもしれないが、区立博物館ということを考えればせめて小中学生は無料であって欲しい。[新川徳彦]

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特別展「川瀬巴水──生誕130年記念」|SYNK(新川徳彦):artscapeレビュー

生誕130年「川瀬巴水 展──郷愁の日本風景」|SYNK(新川徳彦):artscapeレビュー

2016/12/10(土)(SYNK)

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オペラ「眠れる美女~House of the Sleeping Beauties~」

会期:2016/12/10~2017/12/11

東京文化会館 大ホール[東京都]

俳優と歌手が同居する形式のオペラ「眠れる美女」@東京文化会館。フェミニズムから批判されている、老人が眠る美女と添い寝する川端康成の小説が原作である。垂直性がない日本の建築空間と、天井が高いオペラの舞台をどのように調整するかが課題だが、この作品では舞台を上下に分割し、横長フレームをつくり、日本家屋を表現しつつ、上でダンサーの官能的な踊りを展開し、下で記憶をたどる映像を流す。また天候を影で表現する障子のスクリーンなども美しい舞台のデザインだった。

2016/12/10(土)(五十嵐太郎)

鷹野隆大「距離と時間」

会期:2016/11/26~2017/01/09

NADiff Gallery[東京都]

毎日、自分の顔を撮ってるという。そのうち2006年の顔写真2点と、同じ場所で2016年に撮ったもの2点を並べて展示している。やっぱり10年もたつと変わるもんだ。2011年2月から3月にかけて自宅屋上から定点観測のように毎日撮った風景写真も並べている。東京タワーと世界貿易センタービルらしきものが写っているので、浜松町あたりか。だが、3月11日と12日の2日分が抜けていて、その2点だけ別に額装してある。それだけでなんか意味が出てくる。それだけ高いんだろうか。

2016/12/10(土)(村田真)

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