artscapeレビュー

2017年02月15日号のレビュー/プレビュー

菅野由美子展

会期:2017/01/23~2017/02/10

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

もう10年ほどになるだろうか、器や皿が並んだ静謐な静物画を発表している。前は横に器を並べただけのシンプルな画面だったが、新作ではまるでエッシャーの位相空間のように、複雑に入り組んだ棚の上に配置したり、背景をなくして宙に浮かせたような器もある。器を入れるより大きな器=空間を描こうとしているともいえるが、器の中身は「うつ=空」だから描けないし見えないので、また器に戻っていく。背景は変わってもそこは揺るぎない。

2017/01/25(水)(村田真)

太田三郎「Print works」

会期:2017/01/12~2017/01/31

ギャラリーなつか&Cross View Arts[東京都]

壁に5段の棚をとりつけ、その上にさまざまな色紙を並べている。その数200種類。一見ランダムに並んでいるように見えるが、色名(英語名)をアルファベット順に配置したものであることがわかる。例えばAsh greyとかBurnt umberとかCerulean blueといったように。ずっと見ていくと、色名の頭文字にならないアルファベットもあった。QとXだ。さらにそれらの色を使ってアルファベットの色名を表わしたりもしている。例えば「RED」の3文字を、それぞれRose pinkとEmerald greenとDelft blueで塗ることで、赤くないREDを成立させるとか。色彩と記号のあいだを往還させているわけだ。

2017/01/25(水)(村田真)

寺崎百合子  図書館

会期:2017/01/21~2017/02/24

ギャラリー小柳[東京都]

図書館を描いた鉛筆画が6点。薄暗いなかに古びた本たちがかすかに浮かび上がる。本だけでなく地球儀も描いている。が、よく見たら天球儀(月球儀も?)だった。天球儀も丸い本(宇宙誌)だからね。これはほしくなる。入口付近に箱が置かれていてなにかと思ったら、数十本、いや数百本のちびた鉛筆が上向きにぎっしり詰められていた。これも売ってるのだろうか。

2017/01/25(水)(村田真)

2次元×3次元  秋山祐徳太子・池田龍雄・田中信太郎・吉野辰海による平面と立体の新作展

会期:2017/01/23~2017/02/04

ギャラリー58[東京都]

平均年齢80歳を超える4人の「歩く戦後美術史」によるグループ展。歩くといってもギャラリーはよりによってエレベータのないビルの4階にあるから、会場に行くだけでも大変だ。秋山は相変わらずのブリキ彫刻とレリーフ、田中も相変わらずユーモラスなミニマルドローイング、池田も相変わらず、ホントに相変わらず丁寧なアクリル画を出している。吉野は相変わって、頭にトウガラシの突き刺さった犬の彫刻のほか、犬の目、耳、口、鼻、足の肉球をドアップで描いたドローイングを出品。これは5感を表わすという。新境地か。

2017/01/25(水)(村田真)

第3回ワークショップ「風景と記憶」─震災後の復興に及ぼす影響─

会期:2017/01/25

朝日座[福島県]

ワークショップ「風景と記憶」南相馬の朝日座。藤井光の『ASAHIZA 人間は・どこに行く』、三度目の鑑賞は南相馬の朝日座になった。まさにこの映画が題材とし、舞台とする場所である。記憶の器としての建築、地方が共有する問題、シンコペーションするような映像と音、話や動きなどの一部が連続するシーンの切り替え。個人的にも忘れがたい映画となった。南相馬のワークショップでは、まず二上文彦(南相馬市博物館学芸員)が原町無線塔のレクチャーを行なう。土木建築造物としての価値、関東大震災時どのようにアメリカに一報が伝わったか、機能を失った戦後、保存運動、そして解体までの歴史を語る。これを壊したのは本当にもったいないと思う。だからこそ、その喪失を反省し、地元では朝日座を残す試みも起きたのだが。続いて、福屋粧子の宮城におけるプロジェクトのレクチャーでは、失われた街の白模型、牡鹿半島のワークショップ、そして玉浦西への集団移転計画を紹介する。座談会の終了後は、元芝居小屋だった痕跡が残る朝日座(映画館)のバックヤードツアーを行なう。どう使っていたかわからない細部が興味深い。

2017/01/25(水)(五十嵐太郎)

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