2018年10月15日号
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artscapeレビュー

2017年06月15日号のレビュー/プレビュー

大英自然史博物館展

会期:2017/03/18~2017/06/11

国立科学博物館[東京都]

ロンドンの自然史博物館はぼくの好きなミュージアムのひとつ。動植物の装飾で飾られたロマネスク様式の建物といい、ディプロドクスの骨格標本が鎮座する中央ホールといい、昔ながらの古きよき博物館の面影をとどめているからだ。んが、今回の展覧会では残念ながら、そうした博物館の全盛期ともいうべき19世紀の香りが伝わってこない。出品は目玉の始祖鳥の化石をはじめ、さまざまな動植物の標本、オーデュボンの鳥類図譜、ベスビオ火山から採集した岩石、ダーウィンの『種の起原』手稿、日本への探検で発見された隕石など。それらが学者単位、探検単位で分類・展示されているのだが、ちっとも胸が躍らないのだ。それはおそらく出品物のせいではなく、会場が地球館と呼ばれるモダンな建物の貧相な地下空間だからではないか。ラスコーの洞窟壁画展なら地下でもいい、というより地下のがいいが、今回はそうはいかない。どうせなら、本家にはかなわないものの、築80年以上を誇るクラシックな日本館を会場にしてほしかった。

2017/05/12(金)(村田真)

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佐伯慎亮「リバーサイド」

会期:2017/05/12~2017/05/21

KanZan Gallery[東京都]

赤々舎から8年ぶりの新作写真集『リバーサイド』を刊行した佐伯慎亮が、東京でお披露目の展覧会を開催した。同写真集からピックアップされた30点の展示は、引き締まった内容で、なかなか見応えがあった。
佐伯は本作からデジタルカメラを使い始めたのだという。彼のクリアーで、コントラストが鮮やかな写真のスタイルは、むしろデジタルのほうが向いているのかもしれない。もうひとつ感じたのは、彼の写真に東洋的な美意識がかなり深く浸透していることだった。「リバーサイド」のシリーズは元々「此の岸」というタイトルで構想されていたのだという。つまり「リバーサイド」というのは此岸と彼岸の境界の領域ということであり、そこには仏教的な死生観が投影されている。だが、それだけではなく、画面構成や被写体のフォルムの捕まえ方にも、日本や中国の伝統絵画に通じるところがありそうだ。画面の中の空白の部分、つまり「間」の活かし方、輪郭線を強調するカリグラフィー的な被写体の捉え方は、けっして付け焼き刃ではなく、むしろ天性のものだろう。内容と形式とが無理なく一体化しているために、「リバーサイド」はどっしりと安定感のあるシリーズに仕上がっていた。
本人は写真家としての将来に不安を抱え込んでいるようだが、心配することはないと思う。5~10年に一作というような、ゆったりとしたペースで、作品を発表していけば、彼自身の生の流れに自然に寄り沿うかたちで、厚みのある作品世界が構築されていくのではないだろうか。

2017/05/12(金)(飯沢耕太郎)

Vibrant Metropolis / Idyllic Nature. Kirchner ─The Berlin Years

会期:2017/02/10~2017/05/21

チューリッヒ美術館[スイス]

チューリッヒ美術館へ。ドイツ表現主義を代表するエルンスト・キルヒナーのベルリン時代に焦点をあてた企画展を開催していた。彼は建築を学んで画家になり、夜の街と女たちを独特の筆致で描いていた。が、第一次世界大戦に従軍し、心を病み、療養生活に入ったところまでが紹介されていた。そして常設展示のエリアがかなり広い。スイスにゆかりが深い、幻想的なヨハン・ハインリッヒ・フュースリ、象徴主義のアーノルド・ベックリン、世紀末に活躍したフェルディナンド・ホドラー、アルプスを描いたジョバンニ・セガンティーニなどが充実している。特にホドラーの部屋は、その空間デザインも含め、緊張感がみなぎっていた。

写真:左中=エルンスト・キルヒナー 左下=ホドラーの部屋 右上から=チッパーフィールドの新美術館プロジェクト、ジャコメッティ、セガンティーニ

2017/05/12(金)(五十嵐太郎)

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)

[スイス]

郊外にあるチューリッヒ工科大学(ETH)の工学系のキャンパスでの用事を終え、ヴィットリオ・ランプニャーニらの建築学科の教員に案内してもらう。想像以上に大きいのだが、どうやら地下でほとんどの棟がつながっているらしい。ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展のスイス館でもその成果が展示されたように、ロボティクスやデジタル・ファブリケーションの分野で大きな予算を獲得しており、未来の建築を予感させるような先端的な試みに取り組んでいる。が、その一方で、CIAMや創設者である19世紀の建築家ゴットフリート・ゼンパーなど、歴史的なアーカイブもとても充実していたのが印象的だった。なお、大所帯の建築学科だが、日本からの留学生は東工大からの2名だけで、アジア人ではやはり中国が多いという。

写真:左上=ロボティクス 左中=実験建築の仮組 右中=CIAMのアーカイブ 下=ゴットフリート・ゼンパーのアーカイブ

2017/05/12(金)(五十嵐太郎)

《PRIME TOWER》、フライターグ・ショップ・チューリッヒ

[スイス]

ガラス張りの彫刻のような《プライムタワー》は、チューリッヒでひときわ目立つ高層ビルである。さすがに最上階の飲食店からの眺めがよい。これもギゴン&ゴヤーが手がけたものだが、日本の場合、その都市で一番高いビルは通常、ゼネコンか大手設計組織の仕事であり、建築家が関わることはない。すぐ近くにコンテナを積んだチューリッヒ・フライターグ・ショップもある。屋台で賑わっており、映画『スワロウテイル』に出てくる円都のような舞台装置的な空間だった。

写真:下2枚=フライターグ・ショップ・チューリッヒ その他=《PRIME TOWER》

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

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