artscapeレビュー

2017年07月15日号のレビュー/プレビュー

サラダ・ドレッシング(salad Dressing)事務所訪問

[シンガポール]

モダンなデザインの競馬場を商業施設にリノベーションしたザ・グランドスタンドへ。最上部は観客席に向かって大きく庇を張り出す。最上階にあるランドスケープの事務所「サラダ・ドレッシング」を訪問した。多様な植物の育ち方や水質浄化の実験を行ないつつ、生態系から考えるプロジェクトを世界各地で進行している。

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

チャイナタウン、Lighting Planners Associatesシンガポールオフィス

[シンガポール]

シンガポールのチャイナタウンは、保存エリアに指定されており、周辺の高層化とは対照的に、ショップハウスと宗教施設がよく残る。その一角にある、面出薫が率いるLPAの事務所を訪問した。21世紀に入り、LPAは国立の施設群、新しい名所や商業施設、街区の照明計画など、シンガポールのほとんど主要な施設の夜景を創出している。

写真:右下=LPAの事務所が入るショップハウス群

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

ナショナル・ギャラリー・シンガポール

[シンガポール]

ナショナル・ギャラリーは、1930年代の旧最高裁判所と20年代の旧市庁舎をガラスの大屋根でつなぎ、地下から各展示にアクセスする巨大施設だった。草間彌生展では列柱にもドットの装飾をつけ、同時にチルドレンズ・ビエンナーレを開催していたことから、チケット売り場からものすごい行列が続く。しかし、歴史を振り返る常設展示のエリアは閑古鳥で、これは日本と同じ状況である。じつは常設の内容がとても充実しており、旧市庁舎側はシンガポール、旧最高裁側は東南アジアの近現代美術史を時代背景を踏まえて丁寧に紹介し、体系立てて整理していた。特に後者はインドネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジアなど、他国の前衛芸術運動にも焦点を当て、シンガポール主導で東南アジアの近現代美術史をまとめるぞ、という気合を感じる。

写真:左上=ナショナル・ギャラリー模型 右上から=旧最高裁判所、シンガポールの現代美術、草間彌生展

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

宇井眞紀子「アイヌ、100人のいま」

会期:2017/06/08~2017/06/14

キヤノンギャラリー銀座[東京都]

宇井眞紀子は1992年、偶然のきっかけから北海道・二風谷で仲間たちと共同生活をするアイヌ女性、アシリ・レラさんと知り合い、「子連れで」彼らの写真を撮影し始めた。それから20年以上かけて、アイヌ民族の人たちと付き合い、『アイヌときどき日本人』(社会評論社、2009)、『アイヌ、風の肖像』(新泉社、2011)などの写真集を刊行してきた。今回、キヤノンギャラリー銀座で開催された個展「アイヌ、100人のいま」の写真群も、2009年から撮り続けたという労作である。北海道だけでなく、関東周辺から九州までも足を伸ばし、丁寧にコミュニケーションをとりながらポートレートの撮影を続けている。クラウドファンディングによる出版の企画も同時に進められ、冬青社から同名の写真集が刊行された。
宇井の写真撮影は「どこで撮影したいか考えてください。服装も撮られたい服装でお願いします」と告げるところから始まるのだという。つまり、どのような写真になるのかという選択は、モデルとなる人たちにほぼ委ねられている。結果として、並んでいる写真はかなりバラバラな印象を与えるものになった。その「自然体」の雰囲気が、逆に今回の撮影プロジェクトにはふさわしいものだったのではないだろうか。同じアイヌ民族の血を引く人々といっても、彼らを取り巻く環境も、彼ら自身の「アイヌであること」へのこだわりも、大きく引き裂かれており、むしろその多様性こそが「アイヌ、100人のいま」の根幹であると思えるからだ。全体的にポジティブな、明るいトーンでまとめられた写真群には、「今一番言いたい事」というそれぞれのメッセージが添えられていた。それらもまた多種多様であり、写真と言葉とが絡み合いながら「100の物語」を織り上げている。アイヌの人たちを鏡にして、日本人のあり方を浮かび上がらせる、志の高さを感じさせるドキュメンタリーである。なお、展覧会は、キヤノンギャラリー大阪(7月13日~7月19日)、キヤノンギャラリー札幌(7月27日~8月9日)に巡回する。

2017/06/13(火)(飯沢耕太郎)

オーチャード・ロード

[シンガポール]

オーチャード・ロードへ。ど派手な《アイオン・オーチャード》を見ても、もう驚かなくなっている。向かいが黒川紀章の《ウィーロック・プレイス》。世界展開した彼の後期、アブストラクト・シンボリズムのトレードマークになった円錐形が効いている。ここから東南の奥に歩いて行くと、なんとシンガポールではめずらしいひっそりとした戸建の住宅街だった。

写真:上2枚=アイオン・オーチャード、下2枚=《ウィーロック・プレイス》

2017/06/13(火)(五十嵐太郎)

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