2018年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

2017年07月15日号のレビュー/プレビュー

ルイジ・ギッリ「Works from the 1970s」

会期:2017/05/27~2017/06/24

タカ・イシイギャラリー東京[東京都]

著書『写真講義』(みすず書房、2014)の刊行によって、イタリア・スカンディーノ出身の写真家、ルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri, 1943-1992)の名前も少しは知られるようになった。だが、依然として玄人好みの「知る人ぞ知る」の存在であることは間違いない。今回のタカ・イシイギャラリー東京での展示が、おそらく彼の仕事の、日本における最初の本格的な紹介といえるのではないだろうか。
「現実と見かけ(あるいは擬態)、実態と表象、在と不在、外界と内なる世界──こうした形而上の二元性をそれぞれ同じレベルで見つめ、その調和や多義性を探る」。展覧会の会場の紹介文にはこんなふうに書かれている。その通りで、間違いではない。だがギッリの写真は、この文章から想像されるような小難しく、哲学的、形而上学的な印象を与えるものではない。被写体はありふれた都市の日常から切り出されており、そのアプローチの仕方は軽やかで楽しげだ。彼の写真には、カメラを通じて世界を見つめることの幸福感がいつでも伴っている。今回の展示には、ポスターや写真など「現実になるイメージ」、またそれらを見つめる人々を撮影したものが多い。ギッリは写真と世界との関係のあり方を、さまざまな「眼差し」の表象物を通じて探求するのだが、そこには肩の力を抜いた柔軟な姿勢が貫かれている。見ているわれわれにも、その幸福感が伝染してくるようだ。
今回展示されている写真は、1970年代にプリントされたもので、小ぶりなだけでなく褪色もかなり進んでいる。だが、そのあえかな渋みを帯びた色調が、彼の作品世界にはむしろふさわしいように感じた。なお展覧会にあわせて、同ギャラリーから写真集『Luigi Ghirri』が刊行された。印刷された写真図版をページに貼り込んで、丁寧につくり込んでいる。

Luigi Ghirri, “Sassuolo” (Serie: Diaframma 11, 1/125 luce naturale), 1975, C-print,
image size: 15.5 x 19.2 cm © Eredi di Luigi Ghirri

2017/06/14(水)(飯沢耕太郎)

寺内曜子

会期:2017/05/15~2017/06/30

慶應義塾大学アート・スペース[東京都]

「スタンディング・ポイント」と題する新シリーズの第1回は、80-90年代にロンドンで彫刻家として活動してきた寺内曜子。彼女の関心は一貫して裏と表、内と外、部分と全体といったもので、それらがときに等価になり、ときに逆転することを作品で示そうとする。例えば、黒い電話ケーブルを切り裂いてカラフルなワイヤーを取り出した《ホットライン113》。電話ケーブルはバネのように渦を巻きながら屹立し、取り出したワイヤーはだらんと地をはっている。黒くて太いチューブに内包された、色とりどりの細いワイヤー。たとえは悪いが、美人の腹を割いたら出てくる内臓を思い出させる。ちなみにタイトルの113は、NTTでは電話の故障の相談窓口の番号。
もうひとつ、《パンゲア》は紙を丸めてボール状にしたもので、表面にところどころ黒い線が見え隠れしている。背後に大きな正方形の紙が貼ってあり、4辺(縁)が黒く塗られている。ボールはこの紙を丸めたものだろう。だとするなら、表面に見え隠れする黒い線は球の内部で1本につながっていることが予想される。このように幾何学的・論理的思考に基づくコンセプチュアルな作品制作は、80年代に台頭した「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」にしばしば見られた傾向だ。特筆すべきは、多くのアーティストがその後、作品に社会性を与えたり素材を変えて商品化したりするなかで、彼女はいまだにそれをやり続けていること。まったくブレがない。これは尊敬しちゃう。話は変わるけど、なんでここはかんらん舎のアーティストばっかり扱うの? たしかにかんらん舎はブレないけどね。

2017/06/14(水)(村田真)

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

[シンガポール]

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイを見下ろしてから、地上に降りてエリア内に入る。浮遊する巨大な子どもの作品など、現代アートをまぶした巨大な植物園だ。が、なんと言っても人工巨木のスーパーツリーが林立する風景が印象的である。これもキッチュだが、アイコンとしては成功している。残念ながら、今回の滞在では、LPAがデザインしたここの夜景を体験しなかったが、夜にも訪れるべきだった。

2017/06/14(水)(五十嵐太郎)

マリーナ・ベイ・サンズ

[シンガポール]

マリーナ・ベイへ。ここのショッピングセンターのあまりに巨大なことに驚かされた。ドバイでもいろいろな大型商業施設を見たが、これほど吹抜けを連続した贅沢な空間ではなかったように思う。そして海辺ではそれぞれが個を強く主張するクリスタル型のルイ・ヴィトン、手のひらみたいなアート・サイエンス・ミュージアム、ぐるぐる螺旋がまきつくヘリックス・ブリッジなどが華を添える。3棟のホテルを足元と頭上で連結するマリーナ・ベイ・サンズは、内部の傾いた吹抜けも圧巻だった。地上200mの空中庭園、眺めがよいサンズ・スカイパークに登ると、デッキ仕様で、やはりこれは船のイメージである。ただし、片持ちの先端に位置しているだけに、足元が少し揺れ、ちょっと怖い。なお、宿泊客でないと、その奥に続く、プールなどのエリアは体験できない。

写真:左上2枚=マリーナ・ベイ・サンズ、左下=ヘリックス・ブリッジ 右上から=マリーナ・ベイ・サンズ、アート・サイエンス・ミュージアム、ルイ・ヴィトン

2017/06/14(水)(五十嵐太郎)

キャピタル・タワー、都市再開発庁センター(URAセンター)

[シンガポール]

前に訪問したときにもあったビジネス街のキャピタル・タワーやURAセンターへ。後者はシンガポール・シティ・ギャラリーを備え、今年のデザインアワードや都市計画の展示を行なう。目玉は吹抜け空間の巨大都市模型である。上海、北京、シカゴなどでも、こうした施設があったけど、一般市民や観光客が都市の全体像を理解するのに役立つ。日本でもこうした施設をつくれば、公共事業が説明不足だとメディアで叩かれることも減るのではないか。

写真:左上から=URAセンター、シンガポール・シティ・ギャラリー 右上から=キャピタル・タワー、デザインアワードの展示 下=巨大都市模型

2017/06/14(水)(五十嵐太郎)

2017年07月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ