2018年07月15日号
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artscapeレビュー

2017年07月15日号のレビュー/プレビュー

新居上実「配置」

会期:2017/06/08~2017/07/02

Kanzan Gallery[東京都]

新居上実(にい・たかみつ)は1987年、岐阜県生まれ。2014年の第11回写真「1_WALL」展でファイナリストに選出されている。今回のKanzan Galleryでの個展には7点の作品が展示されているが、そのうち5点はバックライトフィルムにインクジェットプリンタで出力した写真を、ライトボックスにおさめて壁に掛けてある。ほかの2点は、オフセットで印刷した写真で、テーブルの上に重ねておき、観客が自由に持ち帰ることができるようになっていた。被写体は石、紙、スチロールなどの断片的、日常的な物体で、それらを机や床の上に直接置いたり、ビニールシートや布を敷いて並べたりしている。おおむねストレートな描写だが、写真を8枚モザイク状に置いて、それを複写した作品もあった。
とてもセンスのよい、よく考えられたインスタレーションで、作品化の手際も申し分ないのだが、どこか既視感を覚えるのは否めない。物体をランダムに配置して、デジタル変換を加えて味付けしていく「テーブル・マジック」的なアプローチが、すでにありふれたものになってきているということだろう。ここからもう一歩作業を進めていくための、具体的かつ必然性のあるアイデアがほしいところだ。なお、本展は菊田樹子がキュレーションする連続展「写真/空間」の2回目の展示だった。「写真の内と外に立ち現れる空間について考える」というコンセプトが、偶然ではあるが、ごく近い会場で開催中の「鏡と穴──彫刻と写真の界面」展と共通していたのが興味深かった。

2017/06/16(金)(飯沢耕太郎)

鏡と穴──彫刻と写真の界面 vol.2 澤田育久

会期:2017/05/27~2017/07/01

gallery αM[東京都]

光田ゆりがキュレーションする連続展「鏡と穴──彫刻と写真の界面」の第2弾。前回の高木こずえ展も面白かったが、今回の澤田育久展もなかなかスリリングな展示だった。澤田は1970年、東京生まれ。金村修のワークショップに参加して本格的に写真家としての活動を開始し、現在は東京・神田神保町の写真ギャラリー「The White」を運営している。今回展示された「closed circuit」シリーズは、2012年11月~2012年10月に、1年間にわたって毎月1度個展を開催して発表したものである。
撮影されているのは、地下鉄の駅と思しき、白っぽい材料で覆い尽くされた無機質な空間である。「日常的に撮影できること」、「撮影場所をありふれた公共的な場所」に限定するという条件を課して撮影されたそれらの写真群は、ツルツルのプラスチック的な質感を持つペーパーに大きく引伸ばして出力され、壁に貼られたり、ワイヤーからクリップで吊り下げられたりして展示されていた。撮影、プリント、展示のプロセスは、きわめて的確に選択されており、現代日本における社会的、空間的な体験のあり方を見事に体現している。澤田の展示をきちんと見るのは今回が初めてだったが、思考力と実践力を備えたスケールの大きな才能の持ち主だと思う。
ワイヤーから吊り下げられた作品は、横幅が壁の作品の半分で、画面が二分割されてスリットが覗いている。そのために画像に微妙なズレが生じているのだが、「視線の移動に伴う対象同士の関係性の変化を通して撮影時の状況に似た体験を鑑賞者に与える」という展示の意図が、そこでも的確な視覚的効果として実現していた。

2017/06/16(金)(飯沢耕太郎)

佐藤令奈『Slightly but quite different』

会期:2017/06/10~2017/07/16

ギャラリー・キドプレス[東京都]

昔、肌色というクレヨンがあった。でも人種によって肌の色は千差万別だから差別につながりかねない、てわけでいつのまにか肌色が消えた。そもそも同じ人間でも背と腹では肌の色は異なるし、夏と冬でも違う。もっといえば、同じ肌でもよくよく見ると、赤、白、黄色、たまに青も混じり合った複雑なマダラ模様をしているのがわかる。とりわけ新鮮な赤ちゃんの肌や、若い女性の乳房とか太ももあたり(あんまり見たことないけど)。つまり「肌色」というのは錯覚、イリュージョンにすぎないのだ。そんなビミョーな肌の色を追求しているのが佐藤令奈だ。いや肌色だけでなく、佐藤は柔らかい肌のプニプニ感も絵具で再現しようとしている。だから彼女は赤ちゃんを描くのだが、肌のドアップのため顔が画面からはみ出すし、あんまりかわいくないし。ただひたすら新鮮な肌を画面に再現しようとしているのだ。3年ほど前には「肌の秘密」と題して、乳白色の肌で知られる藤田嗣治と2人展をやったそうだが、肌のみに関しては藤田よりはるかに上だ。

2017/06/17(土)(村田真)

建築家・大髙正人と鎌倉別館

会期:2017/05/27~2017/09/03

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館[神奈川県]

大髙が設計した美術館をセレブレイトし、彼の軌跡を振り返りつつ、特に神奈川県との関係に焦点を当てる。前川事務所での仕事、鎌倉別館を担当した経緯、ここでかつて展示された絵画、美術界との交流、現代日本彫刻展で審査を担当していたこと、みなとみらいの計画に関与したこと、故郷の福島や三春における作品など、意外に知らない内容が多く、勉強になった。

2017/06/17(土)(五十嵐太郎)

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《鎌倉歴史文化交流館》

[神奈川県]

地下に25mプールもあるノーマン・フォスター設計の超豪邸を改修したものである。外観はガレージ(!)をエントランスに改造する際、大きな開口を設けた以外、ほとんど変わっていないが、ミュージアムにするために、室内はバリアフリーや空調設備を新しく導入している。一方で平行壁によるフォスターらしい明快な空間の構成は踏襲し、もともとコレクションの展示を行なう別館はそのままだ。フォスターは素材の実験を行ないながら、日本的な陰翳礼讃のイメージにも挑戦している。また、彼の事務所が意匠設計した和風オブジェが挿入されているのは興味深い。

2017/06/17(土)(五十嵐太郎)

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