2018年04月15日号
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artscapeレビュー

2017年09月01日号のレビュー/プレビュー

東アジア文化都市2017京都 アジア回廊 現代美術展

会期:2017/08/19~2017/10/15

二条城、京都芸術センター[京都府]

日中韓3カ国から選ばれた3都市が、1年間を通じてさまざまな文化交流プログラムを行なう国家プロジェクト「東アジア文化都市」。今年は日本の京都市、中国の長沙市、韓国の大邱広域市で行なわれており、京都市の中核的な事業が「アジア回廊 現代美術展」だ。昨年の奈良市では、東大寺や薬師寺などの著名7社寺を会場に大規模な現代美術展を行なったが、今年の京都市は会場を二条城と京都芸術センターの2カ所に絞り、凝縮感のあるイベントに仕上げた。アーティスティック・ディレクターを務めたのは建畠晢で、出展作家は25組。うち日本人作家は13組を占める。その大半は京都出身・在住者だが、本展の意図を最も体現していたのは彼らではなく、小沢剛、チェン・シャオション(昨年11月に死去)、ギムホンソックの日中韓3アーティストから成る「西京人」ではなかったか。また、対馬、沖縄、台湾、済州島の祠をリサーチした中村裕太+谷本研(彼らは京都組)も本展にふさわしかった。展覧会としては普通に楽しめる本展だが、建畠がチラシに記したメッセージを読むと、同意しつつも無力感を禁じ得ない。

周知のように、今、世界では排他的で偏狭な思想が渦巻き、テロや紛争も絶えることがありません。しかしこうした時期だからこそ文化芸術による相互理解とコミュニケーションの可能性を推し進めようとする《東アジア文化都市》のプロジェクトの意義は大きいといわなければなりません[本展チラシより]

もちろん文化交流は大切だし、世界が緊迫している今だからこそ相互理解を深めるべきという意見には賛成だ。でも、このような展覧会をいくら繰り返したところでテロや紛争は減らないし、日中韓の関係は変化しない。むしろインバウンドの増加や日本製アニメの浸透のほうがよほど効果があったのではないか。筆者は最近、大規模芸術祭に同様の感想を抱くことが多い。芸術にはまだ失望していないが、芸術祭には飽きてしまったのだろう。

2017/08/18(金)(小吹隆文)

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川俣正「工事中」再開

会期:2017/08/18~2017/09/24

アートフロントギャラリー+ヒルサイドテラス屋上[東京都]

川俣正の「工事中」をリアルタイムで知ってる人はもう50歳以上のはず。1984年、川俣は代官山のヒルサイドテラスで「工事中」と題するプロジェクトを行なった。アートフロントギャラリーの企画で、この建物の内外を材木で覆っていく計画だったが、テナントから実際に「工事中」に間違えられて客足が遠のくとクレームがつき、途中で断念。ところがこれを写真週刊誌がスクープして人が集まり始めたため、テナントは手のひらを返すように続けてほしいとお願いしたらしい。ともあれ、川俣はその直後ACCの奨学金で渡米し、3年後にはドクメンタ8に参加。その年に出版した初の作品集はドクメンタの出品作品を表紙に使い、タイトルを『工事中 KAWAMATA』とした。「工事中」は初期の川俣にとってエポックメーキングなプロジェクトだったのだ。
あれから33年、「工事中」を「再開」するという。なぜいま? と訝しく思うが、「再開」にいたるまでにはいくつかの伏線があった。まずひとつは「代官山インスタレーション」の終焉。これは1999年からヒルサイドテラスを中心とする代官山界隈を舞台に、隔年で開催されたサイトスペシフィックなインスタレーションの公募展。企画はやはりアートフロントギャラリーで、「工事中」に刺激されたであろうことは審査員のひとりに川俣が選ばれたことからもうかがえる。さらに川俣のように都市と切り結ぶアーティストを発掘したいとの思惑もあっただろう。だが、目標は達成されたとはいいがたく、そこそこ楽しめる作品はあったものの、とびきり優れた作品もアーティストも輩出することなく4年前に幕を閉じてしまう。きっと川俣は歯がゆく思ったに違いない。「自分ならこうするのに」と。
ふたつ目は、ヒルサイドテラスの前に架かる歩道橋がこの秋、撤去されることになったこと。それがなぜ「工事中」の再開につながるのかというと、今回は建物の内外ではなく屋上に材木を組んでいるのだが、屋上でやるのは上からの視点を想定しているということであり、件の歩道橋の上から眺めるために制作したということだ。こうして川俣のインスタレーションを見るためにみんな歩道橋に上り、歩道橋の存在も記憶に刻まれるというわけだ。
そしてもうひとつ、この夏、「東京インプログレス」の一環として6年前に南千住に建てられた汐入タワーが解体され、廃材が大量に出たこと。この廃材が代官山に運ばれ、インスタレーションの材料として使われることになった。こうしていくつかの偶然が重なり、たまたま2017年の夏に実現することになったわけだ。実際に歩道橋の上から見ると、こんもりと材木が盛り上がっている感じ。カチッとしたモダン建築にザラッとした大量の材木が積み重なっているさまは、なにか心をざわつかせる。もはや陳腐なたとえだが、津波で流された廃材が建物に引っかかっている光景を彷彿させないでもない。屋上に上がってみると、材木を組んだ内部は人が動けるくらいの空洞になっていて、重なった材木越しに代官山の風景を見ることができる。1階のギャラリーには84年の「工事中」の写真・資料も展示され、アートフロントの北川フラムさんも、写真家の安斎重男さんも、PHスタジオの池田修(現BankART代表)も当たり前だが若い。池田くんなんか体積が半分くらいしかない。

2017/08/18(金)(村田真)

2017 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

会期:2017/08/19~2017/09/24

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

今年51回目を迎えるボローニャ国際絵本原画展。この子供用絵本の見本市に伴うコンクールでは、応募は過去最多だったそうだが、26カ国、75作家が入選した。そのうち、日本人は6名。今回は加えて、メキシコの作家フアン・パロミノが神話を基にした物語『はじまりの前に』の原画(第7回ボローニャSM出版賞受賞記念絵本)が特別展示されている。回を重ねる度に、デジタルメディア、フォトショップやイラストレーターによる作画が増えているのを実感する。ひとくちに絵本原画といっても、技法はさまざま。布のテクスチュアと丁寧な針の運びが映える刺繍作品、シルクスクリーンにサイン入りの作品、コラージュに手書き文字が楽しい作品、など。展覧会ちらしの表に取り上げられている、マリー・ミニョ(フランス)の作品は、色鉛筆のみで仕上げられた、独特な筆触の仕上げが際立つ。表現性も同様に幅広いが、ポップアートを思わせるような作品が多く目についた。美術館を一巡りすると、まるで夏の世界旅行に出かけたような、非日常の気分を味わえる。異国の社会文化を知るだけでなく、絵本を通じて、複数の感情が喚起されるからだ。[竹内有子]

2017/08/19(土)(SYNK)

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プレビュー:神戸港開港150年記念「港都KOBE芸術祭」

会期:2017/09/16~2017/10/15

神戸港、神戸空港島[兵庫県]

今年は神戸開港150年ということで、神戸市内ではさまざまな催しが行なわれている。本展は美術系イベントの中核を成すものだ。出展作家は、小清水漸、新宮晋、林勇気、藤本由紀夫、やなぎみわなど国内組16組と、韓国・広州ビエンナーレ参加作家と中国・天津の作家から成る海外組。地元組で手堅くまとめた印象で、目新しさに欠ける感もあるが、ここは彼らに頑張ってもらうしかない。注目すべきは鑑賞法で、「アート鑑賞船」に乗って神戸港を遊覧しながら、全体の2/3程度の展示が見られる。このプランは過去に「神戸ビエンナーレ」でも実施されたが、港町・神戸の魅力を肌で感じられてとても良かった。問題は船と作品の距離。どうしても遠距離からの鑑賞になるので、強烈な存在感を放つ作品を揃えることがポイントになるだろう。神戸空港島での展示は未知数だが、地元民でも馴染みが薄い場所なので逆にポテンシャルを感じる。今回の展示が上手くいけば、将来的に空港島でのアートイベントが増えるかもしれない。この芸術祭は単発イベントであり、規模やラインアップを見ても中庸感が否めない。大風呂敷を広げるのではなく、地元市民にどれだけ認知され、体験してもらえるかが勝負だ。

2017/08/20(日)(小吹隆文)

プレビュー:ロバート・フランク:ブックス アンド フィルムス, 1947-2017 神戸

会期:2017/09/02~2017/09/22

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)[兵庫県]

『The Americans』などで知られる巨匠写真家ロバート・フランクと、「世界で最も美しい本を作る」と称される出版人ゲルハルト・シュタイデルがタッグを組んで、世界50カ所で行なわれている写真展。フランクの代表作約110点をロールの新聞紙に高画質プリントし、額装などせずそのまま貼り出す。また、フランクが監督した映画の上映やコンタクトプリントも展示される。このユニークな企画の発端は、近年ロバート・フランクのオリジナルプリントが高騰し、高額な保険料のために展覧会の開催が難しくなっていることや、同様の理由でコレクターが作品を貸し渋るケースが増えていることにあるという。フランク自身はこうした状況を不健全と捉えており、自分の作品をより多くの人に見てもらうために本展を企画したのだ。本展では展覧会終了と共に展示品(プリント)が破り捨てられる。それもまた、行き過ぎたオリジナルプリント信仰へのメッセージである。なお、本展は昨年11月に東京藝術大学大学美術館で行なわれたが、日本での開催はこの神戸展が最後になる模様。前回見逃した人には最後のチャンスだ。また今回、世界共通の展覧会カタログに加えて、神戸新聞社の協力による神戸展だけのカタログが販売される。こちらにも注目したい。

2017/08/20(日)(小吹隆文)

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