2018年10月15日号
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artscapeレビュー

2017年09月01日号のレビュー/プレビュー

そこまでやるか 壮大なプロジェクト展

会期:2017/06/23~2017/10/01

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

文字どおり「そこまでやるか」と思わずつぶやいてしまうほど壮大なプロジェクトを手がけるアーティストの活動を見せる展覧会。国内外8組の美術家や建築家らが参加した。いずれもアーティストならではの常軌を逸した想像力を披露しており、十分に楽しむことができる。
例えば西野達は美術館という既成の空間を鮮やかに裏切ってみせた。窓際のスペースに単管を組み上げ、最大で3段のベッドを設え、カプセルホテルとした。予約すれば、じっさいに宿泊することもできるという。また泥絵で知られる淺井裕介も、美術館の白い壁に土と水でダイナミックかつ繊細な絵を描くという点で言えば、美術館で想定されている空間利用を大きく逸脱していると言えるだろう。
一方、美術館という制度そのものから逸脱しているのがクリストである。本人のインタビューを交えた映像で詳しく紹介されているのは、昨年にイタリアのイセオ湖で行なわれた《フローティング・ピアーズ》。ポリエチレン製のブロック22万個を連結させた長大な桟橋で湖畔の街と島を結んだプロジェクトである。オレンジ色の布で覆われた桟橋は幅16メートル、全長3キロ。その上をおびただしい数の観光客が散歩する光景は、夢のように美しい。クリストは湖面に道を拓いたのだ。
アーティストの仕事が想像力を現実化することにあるとすれば、本展で紹介されているアーティストたちはいずれも類稀な想像力の強度と美しさを備えている。しかも、それらを根底で駆動させているのは、美術館あるいは「美術」という制度に依拠しながらも、同時に、それらから大きく逸脱する運動性である。絵画はキャンバスに閉じ込められているわけではないし、美術も美術館にしかないわけではない。グラフィティやアウトサイダーアートという例外的な周縁でなくとも、そもそもアーティストの想像力は、そのような制度とまったく無関係に飛翔することができる自由を誇っている(クリストのインタビュー映像は彼の作品履歴を振り返りながらプロジェクトに取り組むための真髄を明快に言語化している点で必見)。
既成の制度や歴史、与えられた条件の中だけで想像力を開陳しがちな、そしてそのことを不自由とも思わないほど飼い慣らされた、若いアーティストや美大生こそ見るべき展覧会である。

2017/08/20(日)(福住廉)

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Under 35 廖震平

会期:2017/08/25~2017/09/13

BankART Studio NYK 1階ミニギャラリー[神奈川県]

35歳以下の若手作家に発表の機会を与えるU35シリーズの第2弾は、台湾出身の廖震平の個展。彼が描くのは一見ありふれた風景画のようだが、どこか変。例えば木が画面のちょうど中央に立っていたり、画面の枠に沿って四角い標識が描かれていたり、道路のフェンスが画面をニ分割していたり、不自然なほど幾何学的に構築されているのだ。そのため風景画なのに抽象画に見えてくる。というより具象とか抽象という分け方を無効にする絵画、といったほうがいいかもしれない。
1点だけ例を挙げると、巨大な木を描いた《有平面的樹》。右下から斜め上に幹が伸びているが、白くて丸い切り口が画面の中心に位置しているのがわかる。いったんそのことに気づくと、もうこの絵は風景も木も差しおいて、白い丸が主役に躍り出てくる。太い幹や暗い木陰や細かい枝葉は、白い丸を際立たせるための小道具にすぎないのではないかとすら思えてくるのだ。そもそも彼は風景を描いていない。風景を撮影してタブレットで拡大した画像を見ながら描いているのだ。その意味では「画像画」というべきか。だからなのか、彼の表象する風景からはなんの感動も伝わってこない。伝わってくるのは絵画を構築しようとする意志であり執念だ。そこに感動する。

2017/08/25(金)(村田真)

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