2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2017年09月15日号のレビュー/プレビュー

「プレイヤー」

会期:2017/08/04~2017/08/27

シアターコクーン[東京都]

前川知大による作なので観劇した「プレイヤー」@シアターコクーン。椅子だけが並べられたシンプルな舞台に、ときおり部屋そのもの(!)が出入りするセット。死者の記憶を共有するものたちが、「プレイヤー」として彼らの声を再生してしまう演劇を練習するというメタ的な設定である。だが、それはやがてすでに亡くなっていた脚本家の未完成の台本と、それを演じる俳優の関係と重なっていく。最後は『リング』のように、死と伝染の話となり、恐ろしさを感じる作品だった。

2017/08/09(水)(五十嵐太郎)

西関大屋

[中国・広州市]

西関大屋では、近代建築がよく残るストリートが幾つかあって、街歩きが目を楽しませる。確かに、ファサードを観察すると、三重の扉が特徴的だった。ここでは西洋の様式が異文化のなかで変容しながら根付いている。もし26年前に広州を訪れていたら、こうした近代建築群の街並みだけを見ていたはずだが、いまやポストモダンを飛び越え、現代のアイコン建築と同居する大都市に変貌したことは感慨深い。

2017/08/09(水)(五十嵐太郎)

陳氏書院、六榕寺、懐聖寺

[中国・広州市]

まとめて幾つかの古建築をまわった。陳氏書院は、頭上の激しい装飾に圧倒されるが、プランはシステマティックであり、理念的な建築だった。光孝禅寺は、唐様の木造寺院であり、組物のあいだを壁で埋めていないので、屋根や2層目が浮いたように見える。また六榕寺は多角形プラン、9層の塔が目立つ。特に初層の外周天井が興味深い。外から見上げると、垂木が軒先よりはみ出てるようだった。電気街に近い懐聖寺は、モスクである。本体は中国建築と似ているが、道路側のミナレット(光塔)の造形が非中国的だろう。そして五仙観は、階段をのぼって奥に突然あらわれる赤い鐘楼がデカい。ここの展示には、昔の広州の都市模型がある。無料の施設ゆえか、近所の人のたまり場になっている。

写真:上から2枚ずつ=《陳氏書院》《光孝禅寺》《六榕寺》《懐聖寺》《五仙観》

2017/08/09(水)(五十嵐太郎)

《聖心堂》

[中国・広州市]

広州の市場を抜けて、《聖心堂》へ。19世紀後半に建設されたカトリック教会でかなり本格的なゴシック様式である(西欧に比べると小さいけど)。残念ながら内部は入れなかった。外部の彫刻装飾の少ないところは、日本のウエディング・チャペルにも共通する。なお、手前に洋風の建物群が対称に並び、その奥に教会が建つので効果的な景観だった。続いて、出島のような一角だった沙面を散策する。イギリスやフランスの租界だったことから、近代の様式建築が多く残っていた。角地に建ち、ドームを頂く旧香港上海銀行、そのはす向かいの旧ドイツ領事館、修復中の旧インドシナ銀行、ベランダ式の古典主義による旧フランス士官宿舎などである。それにしても、暑いときに歩くと日陰をつくるベランダ式のありがたさがよくわかる。

写真:上2枚=《聖心堂》 左上2番目=沙面の地図 左下=《旧香港上海銀行》 右下2番目から=《旧ドイツ領事館》《旧フランス士官宿舎》

2017/08/09(水)(五十嵐太郎)

森山大道「Pretty Woman」

会期:2017/06/13~2017/09/17

Akio Nagasawa Gallery[東京都]

このところの荒木経惟の大爆発も驚きだが、森山大道も負けてはいない。いまや「後期高齢者」になった彼らのエネルギーの高揚ぶりを見ていると、単なる世代論では割り切れない、特別の力が働いているようにも思えてくる。
森山は2000年代以降、写真集だけでなく展示にも力を注ぐようになってきているが、今回のAkio Nagasawa Galleryでのインスタレーションは、予想以上に大変なことになっていた。壁だけでなく、柱にもコラージュ状にプリントが貼り巡らされ、その上にフレーム入りの作品が掛けられている。カラーとモノクロームが混じり合った作品は、すべて「この一年」に撮影されたという新作であり、そこから「Pretty Woman」というテーマに沿って選択されたものだ。こうしてみると、森山にとってのWomanのイメージの許容範囲が相当に広いことに気がつく。文字通りの「Pretty Woman」の写真もないわけではないが、そこからかけ離れて見えるものも多い。さまざまな物体、ポスターや看板などの二次的な画像、さらには男性すら、強引にWomanの範疇に組み入れられている。それはそのまま、森山が現実世界に対して向ける眼差しの幅の広さを示しているのだが、それでもどの写真も、森山の世界観をそのまま体現しているように見えてくる。信じられないような力業を軽々とやってのけていることに逆に凄みを感じる。
展覧会に合わせて、Akio Nagasawa Publishingから同名の写真集が刊行された。ど派手なデザインの表紙やレイアウトが、写真集の内容にうまく対応している(造本は中島浩)。

2017/08/11(金)(飯沢耕太郎)

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