2018年04月15日号
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artscapeレビュー

2017年09月15日号のレビュー/プレビュー

《佐賀県立博物館》《市村記念体育館》《佐賀県立図書館》

[佐賀県]

佐賀にて、第一工房+内田祥哉による《佐賀県立博物館》と、坂倉準三による《市村記念体育館》へ。いずれもオブジェのような造形の外観だが、前回に佐賀を訪問したときは、内部までは見ることができなかった建築である。説明責任や社会性、あるいはコミュニティなどの前口上がなくても、カタチ一発で勝負できた時代の力強いデザインに惚れ惚れする。隣に連結する美術館も、博物館をリスペクトしたデザインだった。また第一工房+内田祥哉の《佐賀県立図書館》は、前日に見た《武雄市図書館》と比べると、ザ図書館というべき古いタイプの公共建築である。ただ、せっかく気持ちがよさそうなカフェがあるのに、肝心の祝日は休みなのが残念。内部も確かに《武雄市図書館》の方が涼しく過ごせそうなのだけど、蔵書はちゃんとしており、本来の図書館としてはこうあるべき姿を示す。

写真:左=《佐賀県立博物館》 右上2枚=《市村記念体育館》 右下2枚=《佐賀県立美術館》と《佐賀県立図書館》

2017/07/17(月)(五十嵐太郎)

川口和之「PROSPECTS」

会期:2017/07/22~2017/08/06

photographers' gallery[東京都]

川口和之は1958年、兵庫県姫路市生まれ。1977年に写真家集団Photo Streetを結成し、その中心メンバーとして主に路上の光景を撮影・記録し続けてきた。写真集として『Only Yesterday』(蒼穹舎、2010)、『沖縄幻視行』(同、2015)などがある。
今回展示された「PROSPECTS」(2011~17)は、川口にとっては身近な地域である大阪府から岡山県にかけて、つまり明治以前の呼称でいえば、摂津、播磨、丹波、但馬、淡路、備前あたりの眺めを、淡々と、感情移入することなく撮影したシリーズである。それらの写真を見ていると、いま日本の地方都市を覆い尽くそうとしている、「穏やかな滅び」の気配が色濃くあらわれていることに気がつく。歯が抜けたように空き地が目立つ商店街、まったく人気のない街並、白々とした舗装道路、妙にポップな看板、建て増しでアンバランスになってしまった家々──川口は、それらの見方によってはネガティブで物寂しい光景を、4000万画素を超えるデジタルカメラで、細部まで丁寧に写しとっていく。
モノクロームという選択肢もあったはずだが、あえてカラープリントに仕上げたのがよかったのではないだろうか。モノクロームだと情緒的に見えかねない街の眺めの、なんとも言いようのない身も蓋もなさが、ありありと提示されているからだ。それはまさに、2010年代後半の日本のPROSPECTS(眺望、予兆、展望)そのものといえる。なお展覧会にあわせてPhoto Streetから同名の写真集が刊行された。素っ気ないレポート風の装丁が、掲載されている写真の内容とうまくマッチしている。

2017/07/23(日)(飯沢耕太郎)

赤鹿麻耶「大きくて軽い、小さくて重い」

会期:2017/07/18~2017/08/26

Kanzan Gallery[東京都]

展覧会のキュレーターやプロデューサーの役割については懐疑的な意見もあるが、赤鹿麻耶の今回の展示などを見ると、やはり大きな意味を持つのではないかと感じる。本展は、菊田樹子のキュレーションによってKanzan Galleryで開催されている連続展「写真/空間」の第3回目にあたる。それを見ると、いつもの赤鹿の、空き地や銭湯などで展開される、ごった煮状態のインスタレーションとはかなり違った印象を受けたからだ。
といっても、ポートレート、スナップ写真、オブジェを使った演出写真などが見境なく混じり合う構造に違いはない。だが、今回のようなホワイト・キューブでの展示空間を構成するにあたって、菊田はあえて「展示方法のディテール(大きさ、並べ方、印画紙の平面やたわみ、浮かぶことや隔てられることに起因する見え方の違い)に変化をつけた」という。そのことによって、野放図に伸び広がって、収拾がつかなくなりがちな赤鹿の作品が、すっきりと目に収まって見えるようになった。あまりコントロールを効かせすぎると、パワーが落ちてまとまりすぎになるが、そのあたりのバランス感覚が、とてもうまくいっていた。
「他人の見た夢」の再現、視覚化というこのシリーズの狙いも、しっかりと伝わってきた。これもやり方次第では混乱しがちなテーマだが、今回は丁寧につくり込まれていて説得力がある。まさに「大きくて軽い、小さくて重い」という、矛盾や飛躍を含んだ「夢」の構造に、全力でにじり寄ろうとしていることが伝わってきた。ただ、それぞれの写真のキャプションやテキストがすべて省かれているのが気になる。夢を言葉で捕獲・記述して、写真と対照させていくことも考えられそうだ。

2017/07/23(日)(飯沢耕太郎)

1000年忌特別展「源信 地獄・極楽への扉」

会期:2017/07/15~2017/09/03

奈良国立博物館[奈良県]

「往生要集」などを通じて死後の世界のイメージに影響を与えた比叡山の僧・源信にちなむ、絵画と彫刻を展示する企画だ。聖衆来迎寺六道絵をはじめとする地獄図が生き生きと描かれ、アーティストを触発したことがうかがえる。ただ、極楽図の方は、平穏過ぎて、どうしてもやや単調になってしまう。地下通路を経由して、なら仏像館へ。これだけ大量に仏像を一堂に並べると、時代ごとの造形の違いが実物で勉強できる。確かに、飛鳥/奈良時代だと顔が違う。われわれが一般にイメージする仏像の顔はそれより後のものである。ただし、ここのリノベーション、真上に顔を向けないと、ほとんどオリジナルの天井が隠れてしまうのは残念だ。

写真:上=《なら仏像館》 下=《奈良国立博物館》

2017/07/23(日)(五十嵐太郎)

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《春日大社国宝殿》

[奈良県]

天理から奈良に移動し、谷口吉郎による旧宝物殿を増改築した白い《春日大社国宝殿》へ。さすが隈研吾の事務所で《根津美術館》などを手がけた弥田俊男の監修だけにキレイである。内外でルーバーが活躍し、天井の照明もその隙間に巧みに埋め込む。このタイプの和を感じさせるデザインの手法は発明よりも、洗練の領域に達している。1階の導入部では、この手の施設にはめずらしく、メディア・アート的なインスタレーションをもうけていた。

写真:上3枚=《春日大社国宝殿》 左下=《春日大社》 右下=《春日大社国宝殿》内部のインスタレーション

2017/07/23(日)(五十嵐太郎)

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