2018年06月15日号
次回7月2日更新予定

artscapeレビュー

2017年09月15日号のレビュー/プレビュー

天理

[奈良県]

街の中心である神殿と教祖殿を見学する。ここは信者だけでなく、一般人にも開放されているので、是非オススメしたい。京都や奈良の社寺と違い、無料である。世界各地の宗教建築を見てきたが、東西南北の四方向から、信仰の対象である甘露台を拝む形式は、きわめてユニークなのだ。文化財でいばる社寺と違い、いつも生きた宗教を日本で感じることができる希有な空間である。初めて神殿を訪れたのは、22年前。座った信者たちが手踊りしながら「あしきをはろうて、助けたまえ、天理王のみこと」を歌う風景は変わらないが、前に聞いたことがない旋律が増えて(?)いたり、かなり洗練された歌い方にも遭遇した。長期間、反復と変容を重ねることで、宗教音楽は発達し、美しさを獲得する。

写真:上=天理教の神殿 下=おやさとやかた計画の建物

2017/07/23(日)(五十嵐太郎)

《駅前広場コフフン》

[奈良県]

約10年ぶりの天理へ。新宗教建築研究で何度も足を運んだ都市だが、まさか現代建築を目的に再訪するとは思わなかった。nendoによる《駅前広場コフフン》が登場したからである。同心円の組み合わせだけの単純な造形であり、下手をすると学部のスタディで怒られそうなプランだが、いやいやアクティビティを引き出すことに大成功のデザインだった。久しぶりに、神殿へと続くアーケード街を歩く。シャッター商店街にならず、昭和的な店舗がよく残っている貴重な場所を維持できているのは、おそらく宗教の参道になっているからだ。とはいえ、それでも少し空き地が増えたような感じがする。背後を隠しつつ、小さな公共空間を設けるなど、空き地を感じさせない工夫をしていたが。

写真:右下=天理本通り商店街 ほかすべて=《駅前広場コフフン》

2017/07/23(日)(五十嵐太郎)

荒木経惟「センチメンタルな旅 1971─2017─」

会期:2017/07/25~2017/09/24

東京都写真美術館[東京都]

昨年9月のリニューアル・オープン以来、「総合開館20周年記念」として開催されてきた東京都写真美術館の企画展の掉尾を飾るのは、荒木経惟の「センチメンタルな旅 1971─2017─」だった。彼の「私小説としての写真」の起点となった私家版写真集『センチメンタルな旅』から、新作の「写狂老人A日記 2017.1.1─2017.1.27─2017.3.2」まで、1990年に亡くなった妻、陽子さんとのプライべートな関係を投影した写真を集成した展示である。
「わが愛、陽子」、「東京は、秋」、「食事」、「空景/近景」、「遺作 空2」といったよく知られた作品に加えて、「プロローグ」のパートに展示された、二人が出会ったばかりの時期の日常を綴った「愛のプロローグ ぼくの陽子」(モノクロ/カラーポジ、100点)など、初公開の作品もある。まさに彼の「写真家人生」における最も重要な写真群であり、荒木にとって陽子の存在が、写真家としての方向性を定め、実践していくプロセスにおいていかに大切なものだったのかがヴィヴィッドに伝わってきた。とはいえ、荒木と陽子の関係は一筋縄ではいかない。「陽子のメモワール」のパートに展示された「ノスタルジアの夜」や「愛のバルコニー」といったシリーズを見ると、「撮る─撮られる」、「見る─見られる」という二人の行為が、時には一般的な男女の関係を踏み越えるほどの激しさでエスカレートしていることがわかる。荒木と陽子の物語は、予定調和にはおさまり切れない歪みや軋みを含み込んでいたのではないだろうか。
それにしても、今年は時ならぬ「荒木祭り」になりそうだ。年末の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の「私、写真。」展を含めて、20以上の企画が進行しているという。この凄まじいエネルギーの噴出ぶりはただごとではない。

2017/07/24(月)(飯沢耕太郎)

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六日町の町屋

[山形県]

安藤忠雄事務所出身の矢野英裕による独立後第一作の事務所併用住宅を見学した。道路拡幅を受けた敷地であり、コンクリートの壁に挟まれた細長い3階建てのRC造である。施主の趣味を反映した家具の効果もあって、フロアごとに別世界が展開する一方で、吊った階段室や垂直の光庭によって縦方向にも空間を貫き、光を導く。交差点から見える、住宅のスケール感を超える長いコンクリートの壁の表情が興味深い。

2017/07/25(火)(五十嵐太郎)

《済生館本館》

[山形県]

山形市内では、移築された《済生館本館》へ。かつてランドマークだった重要な建築を保存したのはいいのだが、新しい敷地があまり効果的な場所ではないのが、もったいない。中央正面に高い塔を掲げ、その背後に多角形の回廊が連結する、いわゆる疑洋風の代表作だが、さすがに無理矢理つめこんだような階段の収まりはぎこちない。

2017/07/25(火)(五十嵐太郎)

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