2018年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

2017年09月15日号のレビュー/プレビュー

リボーンアート・フェスティバル2017 その5(石巻市街地)

会期:2017/07/22~2017/09/10

宮城県石巻市ほか[宮城県]

市街地に戻り、つい1カ月前まで営業していたポルノ映画館を舞台にしたカオス*ラウンジとハスラー・アキラの作品へ。劇場の歴史や津波の記憶に迫る力業の空間インスタレーションやVR体験もあるが、一瞬どこまでオリジナルでどこまでが介入した作品かわからない部分も興味深く、作家との相性がよい会場である。最後は19時を待って、中瀬のカールステン・ニコライの作品へ。レザーを宙に向かって放ち、細い糸のような線がどこまでも高く高く伸びていくような視覚体験だった。まわりでは普通に釣りをしている人も多く、リボーンを認識していない彼らからは宇宙と交信し、UFOを呼び寄せていると思われたかもしれない。もっとも、石巻の市街地では驚くほど数多くのリボーンの幟やポスターがあって、大都市・名古屋でいくらあいちトリエンナーレががんばっても、この密度感は出せないだろう。音楽フェスからアートに人が流れるか(暑いのに無理して多く体験するのは似ているが)、今後の継続開催など、行方と展開が興味深い。

写真:上4枚=カオス*ラウンジ《地球をしばらく止めてくれ、ぼくはゆっくり映画をみたい。》、ハスラー・アキラ《私たちは互いの勇気になろう》 下2枚=カールステン・ニコライ《石巻のためのstring(糸)》

2017/07/26(水)(五十嵐太郎)

リボーンアート・フェスティバル2017 その4(鮎川エリア)

会期:2017/07/22~2017/09/10

宮城県石巻市ほか[宮城県]

半島先端の鮎川エリアでは、金華山を望む展望台の草間作品に寄って、お寺にある岩井優の作品へ。半島で投棄されたものを集めて、ドーム群にかけるのだが、廃品はもちろん、殺された鹿の死骸や皮があちこちに。しかも頭だけ残った骨格や脚の断片などである。時間をかけて制作した凄みがにじみ出るが、他の芸術祭では実現しづらい作品だろう。コバルト荘跡地には、宮島達男と増田セバスチャンがある。前者はおなじみのデジタル・カウンター群だが、風景に開く試みに挑戦する。今後も発展する予定であり、現状が完成形ではないが、侵入する外光の調整が難しそうだった。後者は浜に降りる途中に、あっけにとられるようなかわいい要素に埋め尽くされたツリーハウスをつくる。幸い快晴だったが、雨の日の半島無鑑賞は辛そうだ。結局、時間切れで街に引き返したが、評判がよかった島袋道浩、パルコ木下、コンタクト・ゴンゾらの作品を見逃した。

写真:上2枚=岩井優《ダンパリウム》 中2枚=宮島達男《時の海-東北》 下2枚=増田セバスチャン《あっちとこっち #東北》

2017/07/26(水)(五十嵐太郎)

リボーンアート・フェスティバル2017 その3(牡鹿ビレッジ)

会期:2017/07/22~2017/09/10

宮城県石巻市ほか[宮城県]

牡鹿ビレッジでは、フジワラボによる食堂(参道を意識した変形バタフライ屋根に大開口)、大小のとんがり屋根が並ぶトイレがつくられた。広場はワークショップや各種の企業の協賛を得て、かつての村の中心地に実現したものだという。リボーンは、ぎりぎりまでプログラムが確定しないなか、臨機応変に状況に合わせて調整するプロジェクトだ。ここから歩いていく灯台への道では、鈴木康広によるジッパーのかたちをした足こぎボート、ブルース・ナウマンによる音の作品。そして秘境のような貝殻の入江に、今回のメインビジュアルになった名和晃平の大きな鹿の作品がたつ。ここは現在、有料ゾーンだが、自然公園の制限ゆえに永久設置とはならず、3年間の期間限定で残るらしい。貝殻の入江では、人工的に掘られた洞窟の内部に、宮永愛子やさわひらきらの作品を設置し、圧倒的な場の迫力を生かす。海を眺めるレストランも新設され、おいしい料理をいただく。快晴だと本当に気持ちがよい。そして名和の作品のまわりでライブも行なわれるという。

写真:上3枚=牡鹿ビレッジ 左中=さわひらき《燈話》 左下=海を眺めるレストラン 右2番目から=鈴木康広《ファスナーの船(足漕ぎボート)》、宮永愛子《海は森からうまれる》、名和晃平《White Deer (Oshika)》

2017/07/26(水)(五十嵐太郎)

リボーンアート・フェスティバル2017 その2(牡鹿半島、桃浦)

会期:2017/07/22~2017/09/10

宮城県石巻市ほか[宮城県]

牡鹿半島へ移動すると、途中で目によるツアー形式の作品のクルマに遭遇した。建物の和室を経由し、見晴らしをよくした改造車に乗って、防潮堤横やがんばろう石巻などの風景を観賞するらしい。なお、半島エリアはあまり多くのクルマが交通できるところではないので、リボーンの巡回バスが定期的に運行しており、それを使いながら、各地の作品を鑑賞することが推奨された。コアハウスのある桃浦へ。風でぱたぱた小さな木板が動き、音が鳴るインフォメーション、ギャレス・ムーアの過去作のほか、墓地の横で古墳に潜るようなchim↑pomの地下冷凍コンテナ。ここで展示されている涙の氷である。ただし、実はベタな被災者のお涙頂戴とはどうも少し違うようで、ある意味で即物的に得られた涙らしい。近くではap bankのサポートによって、研修・宿泊施設の桃浦ビレッジも建設中であり、貝島研やドット・アーキテクツらが設計したものだった。ファブリス・イベールの水がじゃあじゃあ出ている農園は、給水過剰で野菜が本当に育つか心配だが、なんともユーモラスで意外にこういうタイプの屋外作品は見たことがなかった。

写真:左上から=ギャレス・ムーア《数える噴水》、chim↑pom《ひとかけら》入り口、ファブリス・イベール《エキリブリウム(バランスを保つ場所)》 右上2枚=桃浦ビレッジ、右下=インフォメーション

2017/07/26(水)(五十嵐太郎)

リボーンアート・フェスティバル2017 その1(石巻)

会期:2017/07/22~2017/09/10

宮城県石巻市ほか[宮城県]

リボーンアート・フェスティバル2017の各会場を案内してもらう。正直、仙台でも事前にまったく情報がでまわらず(実際ガイドブックの発売がオープンに間に合わず、ホームページもかなり情報不足)、どうなのか? と思っていたが、「地域アート」的な作品が要請される普通の芸術祭とはだいぶ違うことがよくわかった。効率的にクルマでまわったが、それでも1日で全部を見るのは不可能である。2日は必要な規模だった。まず石巻2.0の向かいで、リボーンの情報センターになっている旧観慶丸商店で初めて地図をゲットする。百貨店だった内部をゼンカイハウス的にリノベーションし、ギャラリー仕様になっていた。ぽつんととり残された旧階段はオブジェのように見える。また一般公開されていない3階のインテリアが面白い。ここにシュタイナーと名和晃平、コンタクト・ゴンゾ、宮永愛子、ナム・ジュン・パイクらのワタリウム的なセレクションを展示し、全体へのイントロダクション的な場となっていた。続いて被災した南浜を見下ろす、日和山公園の神社では、フジワラボがレストランの内部を改造し、JRのインサイドアウト・プロジェクトのためのカメラ空間を設置する。なお、リボーンでは、藤原徹平事務所が基本的に各会場のデザインを担当した。旧石巻港湾病院では、小林武史×WOWによる鏡の間でふわふわバルーンが浮かぶアトラクション的なインスタレーションを展示する。ここが興味深いのは、全体をリボーンアートハウスに改造し、スタッフ、ボランティア、アーティストの宿泊所として活用されていること。シェフも置き、おいしい料理やゲリラ・ライブも楽しむらしい。そして巨大な冷凍庫をスケートパーク化していたワンパークでは、サイドコアによるストリートカルチャー的な展示を挿入する。石巻にまだこれだけ大きな被災建築が残っていることも重要だが、安全性ゆえ内部が使えなくなったことを逆手にとった展示や動線計画など、石巻ならではの特異性をあぶりだ出すアート的な介入が鮮やかだった。

写真:左上2枚=旧観慶丸商店 右上2枚=旧石巻港湾病院 下2枚=ワンパーク

2017/07/26(水)(五十嵐太郎)

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