artscapeレビュー

2009年03月15日号のレビュー/プレビュー

女子美スタイル☆最前線

会期:2009.2.11~2009.2.15

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

女子美(短大も含む)の卒業・修了制作展。1階から3階まで全館を使ってるが、出品者が200人を超すのでキュークツそうだ。ま、このほうがスカスカより祝祭的だが。ファンシーな心臓、キモイ心臓を描いた大小島真木、ポップな色とかたちがうれしい榎本浩子、どこから出てきたのか頭足少女の小沢団子ら、やはり絵画ばかりに目が向くが、白井洋子のたたむと動物になるブランケット《MOKOMOUF》は、すぐに商品化できそうだ。コンドームを使った学生が約2名いたが、使い方が違いますよ。

2009/02/13(金)(村田真)

高松次郎/鷹野隆大「“写真の写真”と写真」

会期:2009/02/15~2009/03/15

太宰府天満宮宝物殿 企画展示室[福岡県]

初夏のような暑さかと思えば、真冬に逆戻り。そんな不安定な天気が続く日々を縫って、梅が真っ盛りの福岡県太宰府市の太宰府天満宮に新幹線と電車を乗り継いで出かけてきた。高松次郎(1936~98)が、1972年に制作し、73年のサンパウロ・ビエンナーレに出品した「写真の写真」シリーズ、さらに高松の「紐のたわみ」や「ビニールのたわみ」といった作品を、天満宮内で撮影した鷹野隆大の新作が同時に展示されるという、魅力的な企画のオープニングに誘われたからだ。
高松の「写真の写真」は去年同名の写真集(大和プレス、発売=赤々舎)としても刊行され、その時から「写真とは何か」というコンセプトを彼なりに突き詰めた意欲作として注目していた。だが今回、やや黄ばんだり、端が丸まったりしたプリントの状態で展示されていた「現物」を見ることができて、高松の思考と実践の凄みを、よりクリアーに理解することができた。置かれた場所、光の状態、ピンナップのされ方など、さまざまな条件が加算されることで、「写真」はその佇まいを大きく変えていく。物質としての印画紙には、「写真とは何か」という問いかけから安易に導きだされる思い込みを、揺さぶったり、無化したりする強烈な力が備わっているということだろう。高松以後も、似たような設定の作品を作った写真家・アーティストは何人かいるが、その手際の鮮やかさと徹底ぶりは際立って見えてくる。
鷹野の「写真」も面白かった。高松の作品の「コンセプチュアル」な要素が、彼の撮影行為によって微妙に膨らんだり、削られたりして、新たな生命力を発する“場”としてよみがえってくる。代表作である「影」シリーズを再現した作品で、影を演じているのは高松夫人と鷹野本人だという。時空を超えたアーティスト同士の対話が、ヴィヴィッドな形で実現している様子が伝わってきて、とてもいい波動の展示だった。2006年から開始された「太宰府天満宮アートプログラム」の企画は、今回で5回目になる。歴史のある場所の磁場が、参加アーティストたちに、よりよい刺激を与え続けていってほしいものだ。

2009/02/15(日)(飯沢耕太郎)

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駒田建築設計事務所《杉並の家》

[東京都]

竣工:2009年

大学の同期である駒田建築設計事務所の手がけた杉並の家を見る。かわいらしい5つのボックスを散りばめたプラン。中央の螺旋階段の部屋に入ると、外部のようだし、これを囲むそれぞれの部屋も反転して、外部空間のように感じられるのは、大きな開口のとり方による工夫が大きい。ボックスが相互に重なる部分のヴォリュームをかきとり、上下斜め方向にも大きく空間がのびる。箱に開けたさまざまな穴がつくる風景の見えや重なりが面白い。

2009/02/15(日)(五十嵐太郎)

ARTIST RECOMMENDED ARTISTS 1:中村友香/中塚弘

会期:2009.1.30~2009.2.15

ギャラリーそわか[京都府]

岩野勝人、室田泉、谷本天志の3名のアーティストが推薦する若手作家の展覧会。1回目は岩野勝人推薦の中村友香、中塚弘。2年前の大阪成蹊大学芸術学部卒業制作展で、ただひとり屋外に《Alone》というジャングルジムのような鉄作品を展示していたのが印象的だった中村は今回、鉄と石膏を素材に用いた立体作品を発表。ブタのような可愛い生きものの形をした《Blue noise》は口(鼻?)の中を覗くと青色の空洞になっていた。タイトルを知るとなおさら頭をすっぽり入れてみたくなる。中村の作品は共通して、つい触れたくなるような衝動に駆られる。中塚は記号的な色や形を描いた平面作品を多数展示。まだ荒削りな印象もあるが観察力の鋭さとセンスの良さは作品に表われていた。

2009/02/15(日)(酒井千穂)

「FIX」展

会期:2009.2.9~2009.2.15

元立誠小学校[京都府]

作品の鑑賞体験をよりいっそう鑑賞者の心に焼き付けようと、谷澤紗和子、シンチカ、羽部ちひろ、吉岡千尋、桝本佳子、鈴木宏樹、本武史、今村遼佑ら、80年代生まれ8組の作家が企画した展覧会。小学校だった会場の展示空間は2階と3階の教室。2階の展示を見て、3階へ上る階段の踊り場で「あれ?」と立ち止まる。同じ作品が階下にも展示されていた。同じ教室の並び、同じ展示方法で各作家がシリーズ作品を発表していると3階の展示をみてようやく気がついたが、会場の特性を上手く利用した構成で、間違い探しや記憶をめぐるゲームのように注意深く見てしまうし、これがじつに楽しく作品もどれも印象に残っている。工夫溢れる面白い試みだ。 「FIX」展:http://fixexhibition.web.fc2.com/

2009/02/15(日)(酒井千穂)

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