artscapeレビュー

2009年05月01日号のレビュー/プレビュー

板倉広美 展

会期:2009/03/30~2009/04/05

信濃橋画廊[大阪府]

モーリス・ルイスが墨絵を描いたらこうなるのかしら、と思わせる絵画作品。麻と化学繊維で粗めに織られた布に水を含ませ、墨を置いた後、さらに水を流して画面を作っている。作者にルイスからの影響を訊ねると、ルイスどころか絵の勉強すら独学と聞いて驚かされた。知らない者の強みといえばそれまでだが、東洋的な美意識と西洋のスタイルが絶妙のバランスで融合した作品に、独特の深い余韻があるのは確かだ。

2009/03/30(月)(小吹隆文)

梅田哲也「ぬ」

会期:2009/03/28~2009/04/12

AD&A Gallery[大阪府]

画廊の3室でインスタレーション作品が発表された。作品は日用品を組み合わせて意外な効果を生みだしたり、家電製品を改造して動きのあるオブジェをつくるというもの。それぞれのオブジェは一見無関係なようでいながら、実はお互い緩やかにつながっていて影響を与え合っている。作品を見るうち「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざが思い出された。思いのほか抒情性が感じられるのも特徴と言える。

2009/03/30(月)(小吹隆文)

アーティスト・ファイル2009──現代の作家たち

会期:2009/03/04~2009/05/06

国立新美術館[東京都]

国立新美術館の恒例企画。「とくにテーマを設けず、学芸スタッフが日ごろのフィールドワークの中で注目する作家たちを取り上げ、それぞれ個展形式で紹介する展覧会」だ。全国の公立美術館でエゴイスティックなだけの奇天烈きわまりないテーマが恥ずかしげもなく披露されていることを考えれば、共通するテーマを設定しないことは、ひとまずよしとしよう。けれども、それにしても気になるのは「フィールドワーク」という言葉。学芸スタッフが日ごろどんなフィールドワークをしているのだろうと不思議に思って図録を開いてみたが、それを伺わせる記述はほとんど見受けられない。フィールドワークとは、数値や文字として表象される以前の「生」のデータを収集するという明確な目的意識にもとづきながら、特定の対象や現場に継続的に入り込む活動を指している。であれば、学芸スタッフが鑑賞者に説明しなければならないのは、美術評論家のように作家論を論じることではなく、むしろそのフィールドワークの正確な報告と、それを根拠にして当該作家を取り上げることの根拠を論理的に説く推薦文の公表ではないか。鑑賞者と美術評論家のあいだが限りなく近づいている今、中途半端な作家論に耳を傾けてやるほど鑑賞者は寛容ではない。学芸スタッフとしての職責をまっとうに果たしてほしい。

2009/03/30(月)(福住廉)

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流政之 展──建築と彫刻──

会期:2009/03/26~2009/05/15

GALLERY A4[東京都]

「割れ肌」で知られる彫刻家・流政之の個展。石彫刻やその写真、関連資料などを展示した。なかでも見応えがあったのが、四国にあるというスタジオを紹介する短い映像作品。瀬戸内海を一望する丘にそびえ立つ大きな建物は、一見すると要塞のようだが、室内に展示された数々の作品を見ると、それ自体がすでに美術館のようにも見える。

2009/03/31(火)(福住廉)

安齋重男 作品展「Unforgettable Moments」

会期:2009/03/24~2009/04/25

ZEIT-FOTO SALON[東京都]

写真家・安齋重男の写真展。ボイスやローリー・アンダーソン、パイクなど有名アーティストらの写真を、手書きのメッセージを書きつけて発表した。

2009/03/31(火)(福住廉)

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