artscapeレビュー

2009年05月01日号のレビュー/プレビュー

GUNの軌跡展 新潟現代美術家集団GUN結成そして今

会期:2009/04/06~2009/04/12

TOKI ART SPACE[東京都]

1967年に結成された新潟現代美術家集団GUN。本展は、作品と資料によってその軌跡と現在を回顧する展覧会。《雪のイメージを変えるイベント》をはじめ、野外での大規模な行為芸術の記録をまとめて見ることができた。

2009/04/11(土)(福住廉)

村上隆 個展 inochi

会期:2009/04/03~2009/04/16

Kaikai Kiki Gallery[東京都]

村上隆の新作展。「いのちくん」というキャラクターの立体作品、それを縮小したフィギュア作品、製作過程でのドローイングやデッサン画、キャラクターをもとにしたCM風の映像作品などを発表した。巨大な頭部と対照的にか細い顎、ひょろひょろとした手足、猫背とぽっこり膨らんだお腹など、現代っ子の特徴をこれでもかと肥大化させたグロテスクな身体表現に、人間の未来像が仮託されているように見えた。写真作品には、相田みつを風のじつにストレートなメッセージが書きつけられていたが、ストレートというアイロニーなのか、文字どおりストレートに転向したのか、わかりかねる。

2009/04/11(土)(福住廉)

小谷元彦 SP4”the specter” in modern sculpture

会期:2009/04/04~2009/05/02

山本現代[東京都]

小谷元彦の新作展。疾走する馬にまたがり刀を構える武士の彫像などを発表した。巨大な馬とボロ着をまとった落ち武者のような人体はそれだけで圧巻だが、おもしろいのは馬も人もすべて表面の皮膚を一枚剥がしているところ。筋肉の繊維がむき出しになっているから、解剖用の人体模型のようにグロテスクな印象を強くしている。衣裳を剥ぎ取られた裸婦像へのアイロニーなのか、表面を剥ぎ取り、中身を剥き出しにすることによって「彫刻以前」に立ち返ろうとしているように思えた。

2009/04/11(土)(福住廉)

やなぎみわ マイ・グランドマザーズ

会期:2009/03/07~2009/05/10

東京都写真美術館[東京都]

やなぎみわの個展。《マイ・グランドマザーズ》シリーズのなかから新作を含めた、およそ30点を発表した。若い女性が思い描く50年後の自身の姿を視覚化した写真は、それぞれ個性的で、個別的に見れば、たしかにヴァリエイションに富むものだが、全体的に見れば、どれも想像力が類型化されており、だから写真を見ていくうちに次第に興味が失われていく。若い女性が思い描く「老い」の、なんと薄っぺらいことだろう。当然といえば当然だが、「老い」というどうしょうもない現実に直面していない者に「老い」を想像させることにどれだけの意味があるのか、いまいちわかりにくい。余計なおせっかいを承知でいえば、作家が被写体の安直な欲望を相対化する「他者」の働きを徹底することができていれば、あるいはもっと別の世界がありえたのではないだろうか。

2009/04/12(日)(福住廉)

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生ける伝説 榎忠映像作品上映会

BLD GALLERY[東京都]

開催日:2009/3/22、3/29、4/5、4/12、4/19

美術家・榎忠にまつわる映像作品を見せる上映会。今回見たのは、半刈りでハンガリーへ行ったパフォーマンスを中心としたプログラム。音声が一切ない映像は、新婚旅行を記録したような、ほとんどプライヴェィト・フィルムに近いものだったが、それは榎の傑作の数々がそうであるように、この伝説的なパフォーマンスもまた、榎自身の暮らしと不可分であることの現われなのだろう。芸術と生活の有機的な統合を唱えるより前に、そもそも最初から両者を同一視していた榎こそ、アヴァンギャルドの名にふさわしいのではないか。

2009/04/12(日)(福住廉)

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