artscapeレビュー

2009年08月01日号のレビュー/プレビュー

wah「すみだ川のおもしろい」展

会期:2009/06/20~2009/07/20

すみだリバーサイドホール・ギャラリー、アサヒビール本部1階ロビー[東京都]

wahによるプロジェクトの報告展。隅田川で「こんなことがあったらいいのに」というアイデアを募り、300件のなかから「川の上でゴルフをする」「船にお風呂がある」「川分け師がいる」などを実現させた、その経緯をペーパーや映像などをとおして発表した。おもしろいのは、非現実的な思いつきをほんとうにやってしまう実行力に加えて、図書館で調べた資料をもとに、昔の人たちもほぼ同じようなことを考え、実行していたという史実を明らかにしていたところ。突飛なアイデアを実現させる活動は、ある一定の歴史的な系譜に位置づけられており、その正当性を根拠にすれば、こうした活動を持続させていくには便利なことこの上ない。逆にいえば、「アート」というほかない、超絶したおもしろさを実現するには、その系譜から抜け出さなければならないということだろう。

2009/07/15(水)(福住廉)

梅津庸一「ゴールドデッサン」

会期:2009/07/11~2009/08/22

ARATANIURANO[東京都]

梅津庸一の個展。金属の先端による点描画などを発表した。モチーフは飛行機や人物など写真やネット上にある既存のイメージをもとにしており、しかもアトリエではなくファミレスで描かれたものだという。凡庸な日常性をこれでもかといわんばかりに突き詰めていくと、その向こう側が見えてくる、そんな方法論にもとづいているようだ。鉄道の切符の裏面を張り巡らせた作品は、無数の皺がくたびれた都市生活を物語るのと同時に、黒のさまざまなグラデーションがはっとするほど美しい。

2009/07/15(水)(福住廉)

堂島リバービエンナーレ2009 リフレクション:アートに見る世界の今

会期:2009/08/08~2009/09/06

堂島リバーフォーラム[大阪府]

2006年と2008年に開催された「シンガポール・ビエンナーレ」の出品作品の中から、政治的・社会的・文化的な問題定義を行なう作品26点をセレクトして紹介。同ビエンナーレを手掛けた南條史生がアートディレクターを、同じくキュレーターを窪田研二が担当。出品作家は、会田誠、松蔭浩之、ツェ・スーメイ、ジェーン・アレキサンダー、アルフレド&イサベル・アキリザンなど。東南アジアや中東の作家が多くを占めるが特徴。

写真:Charly Nijensohn《El Naufragio de los Hombres (The Wreck of Men)》2008

2009/07/15(水)(小吹隆文)

ART OSAKA 2009

会期:2009/08/21~2009/08/23(8/21はプレビュー)

堂島ホテル[大阪府]

大阪・西梅田の堂島ホテルで開催されるアートフェア。2002年に始まった当初の会場はベイエリアだったが、交通至便な現在地に移った2007年より認知度が一気に広まった。今年の参加は国内とアジアの47画廊。ホテルの4フロアを会場とし、客室ごとに参加画廊が展示・販売を行なう。会期中には数々のイベントも予定されている。決して大規模ではないが、コンパクトにまとまっている分作品とじっくり向き合えるのが長所である。なお、今年から初日はプレビューとなり、招待客のみの入場となるのでご注意を。

2009/07/15(水)(小吹隆文)

水都大阪2009

会期:2009/08/21~2009/10/12

大阪市・中之島周辺[大阪府]

大阪・中之島を主会場に、高度成長期を経ていったんは途切れかけた水辺と市民の関係を取り戻そうとする複合イベント。アーティストがかかわるものでは、ヤノベケンジによるアート船とアートツアー「トらやんの大冒険」、KOSUGE1-16、藤浩志、パラモデルら多数の作家が連日ワークショップを繰り広げる「水辺の文化座」、元永定正&中辻悦子、河口龍夫、今村源らが建築遺産を会場に行なう作品展示がある。全体のなかでワークショップが占める比率が高く、見るよりも積極的な参加が求められるのが特徴だ。

2009/07/15(水)(小吹隆文)

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