2018年06月15日号
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artscapeレビュー

2009年08月01日号のレビュー/プレビュー

足立智美による「新国誠一」パフォーマンス

会期:2009/06/22

武蔵野美術大学12号館1階ビデオアトリエ[東京都]

パフォーマー/作曲家の足立智美によるパフォーマンス公演。同大学で催されていた「新国誠一の《具体詩》」展の関連企画として催された。新国の視覚詩と音声詩をそのまま忠実に再現するのではなく、それらをベースにしながらも、積極的に読み替え、エレクトロニクスを多用しながら、詩と音楽のあいだを切り開こうとした。そのため、新国の音読といえば、囁くようなウィスパーヴォイスと、耽美的かつエロティックな声質が特徴的だが、足立は声の抑揚からスピードの高低、ヴォリュームの大小まで大胆にメリハリを利かせ、新国の詩の攻撃的・暴力的な一面を引き出そうとしていたようだ。新国の代表作「雨」(1966)では、雨の中の点点をいちいち一つずつ音読して、「え、あれを全部読むつもり?」と観客を一時的に不安にさせたが、中盤になっておもむろにシャツを脱ぎ捨て、白いTシャツの正面にプリントされた「雨」の文字を指差しながら「あめ」と口にして、観客を唸らせた。

2009/06/22(月)(福住廉)

躍動する魂のきらめき─日本の表現主義

会期:2009/06/23~2009/08/16

兵庫県立美術館[兵庫県]

本展は、1910~20年代(主に大正時代)に起こった前衛的な美術運動を、内面の感情や生命感を表わしたとして“日本の表現主義”と位置付け、約350点の美術・工芸・建築・演劇・音楽作品等で明らかにしようとするもの。同様のテーマで思い出されるのは1988年に開催された「1920年代日本展」だ。実際、出品物にも重複が多々見られるが、“日本の表現主義”とカテゴライズして一歩踏み込んでいるのが今回の特徴である。そのため、萬鐡五郎、村山知義、神原泰といった代表的な作家だけでなく、黒田清輝、富本憲吉など従来の感覚では当てはまらない作家も、表現主義的傾向が見られる例として出品されている。それゆえ記者発表時に、「表現主義を名乗ることは妥当か?」「作家の選定に納得できない」といった議論が起こった。そうした疑問にどう応えていくかは研究者の今後の課題であろう。それはともかく、枷から解き放たれて激情が噴出したかのごとき作品群は、今なおキラキラと輝いて見える。前述の課題はあるものの、図録の出来栄えも含め、十二分に魅力的な展覧会であった。

2009/06/23(火)(小吹隆文)

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風能奈々展「誰がその物語を知る」「草上の想像」

会期:2009/06/19~2009/07/25

小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都[京都府]

今年3月の「VOCA」展に出品した大作など16点からなる「誰がその物語を知る」と、20センチ角の小品108点の「草上の想像」。これだけの量の作品をわずか半年間で、しかも質を落とすことなく描き切ったことに恐れ入る。作品の世界は多分に彼女の内面(記憶や夢想)を反映したものだが、それだけに完成度が少しでも下がれば陳腐な独り遊びに堕してしまう。一貫してテンションを保ち続けたその精神力こそ、まずは称賛されるべきであろう。聞いたところによると、それこそ昼夜分かたず描き続けたので彼女自身も夢か現か判然とせぬ夢遊病的状態になったそうだが、そこまで自分を追い込んだことが作品のリアリティーにつながっているのかもしれない。

2009/06/24(水)(小吹隆文)

吉野辰海 展

会期:2009/06/15~2009/06/27

Gallery58[東京都]

美術家・吉野辰海の個展。近年はブロンズなどの硬質な素材によって捩れた犬などを表現していたが、今回の作品で作風が一転した。「SCREW」と名づけられた新作は、犬の頭部にはちがいないものの、正面はむしろ象の頭部で、両者が融合した特異な形態になっている。巨大な頭部を支えているのは少女のような華奢な裸体だが、これもわき腹や性器を見ると、少女というよりむしろ老婆のような印象すら覚える。そして何よりもこれまでの吉野の作品に見られなかった特徴が、けばけばしいほどの色彩だ。象=犬の頭部はピンクや青に塗られ、大きく開けられた犬の口は真っ赤に彩られている。円熟期を迎えてのポップへの転向宣言というべきか、あるいはモードこそちがえど、そもそも最初からポップだったというべきか。次回の展開が待ち遠しい。

2009/06/25(木)(福住廉)

川瀬知代 展 一葉

会期:2009/06/24~2009/07/05

iTohen[大阪府]

植物や昆虫、海の軟体動物を思わせるシルエットを、みずみずしい色彩で描いた絵画作品。作品の多くは切り抜かれており、マティス晩年の切り絵と相通じるところも。壁面の一隅には人間の顔をモチーフにした連作もあったが、こちらもバリエーションが豊かで目を楽しませてくれた。多分に装飾的な作品だが、こういうのが部屋にあったらきっと楽しいだろう。シリアスなアートも良いが、アクセサリーのように日常に寄り添う作品もまた必要である。

2009/06/26(金)(小吹隆文)

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