artscapeレビュー

2009年11月01日号のレビュー/プレビュー

ヨナタン・メーゼ展 ミシマ・イズ・バック

会期:2009/09/05~2009/10/03

小山登美夫ギャラリー[東京都]

「横浜トリエンナーレ2008」に参加したヨナタン・メーゼの個展。三島由紀夫やアドルフ・ヒトラーなどの図像、原色をふんだんに盛り込んだ表現主義的な絵画、壁に直接書きつけられたメッセージ、パフォーマンスを記録した映像作品などで会場を構成している。混沌とした雰囲気を醸し出そうとしているのはまちがいないとはいえ、芸術の独裁制を説くヨナタンの思想をもとに考えてみると、混沌をエスカレートさせればさせるほど、芸術の独裁制というヴィジョンの稚拙さが浮き彫りになってしまっているように思えてならない。形式的にはむしろ洗練された手法をとる森村泰昌が、同じように作品のなかで芸術の独裁性を説いたことがあったが、ヨナタンとは対照的に、その野望を説得力のあるかたちで魅力的に鑑賞者に届けていた。ファシズムがそうであるように、人びとを惹きつけるには、何よりもまず圧倒的な美しさが必要である。芸術の独裁制を本気で説くのであれば、まず腹筋を鍛えろとヨナタンに言いたい。

2009/10/01(木)(福住廉)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、兵庫県立美術館、神戸港海上、ほか[兵庫県]

2回目を迎えた神戸ビエンナーレ。今回はメイン会場のメリケンパークに加え、兵庫県立美術館と神戸港海上でも作品展を開催。3会場を船で繋ぐという港町・神戸らしい演出も導入された。また。メリケンパーク会場で文化庁メディア芸術祭の入賞・入選作品の上映が行なわれたり、三宮・元町商店街では地元と大学生の協同プロジェクトが行なわれるなど、バラエティの豊かさも実感できた。結論から言うと、その方向性は正解。招待作家を県立美術館に集めることで質の高い展覧会が見られたし、船に乗るのは単純に楽しい。メリケンパークにコンテナを並べて行なわれた展示も前回より進歩が感じられた。また、全会場に入場でき、船にも乗れる一番高額なチケットが1,500円という価格設定は、良心的と言ってよいだろう。あえて苦言を呈すると、コンテナ展示の一部は進歩が感じられなかった。児童絵画展と障害者作品展はともかく、陶芸展といけばな展はもっとやりようがあるはずだ。この点は第3回の課題として改善を希望する。

2009/10/02(金)(小吹隆文)

城戸孝充 展

会期:2009/09/10~2009/10/04

Gallery 21yo-j[東京都]

彫刻家・城戸孝充の新作展。高い天井を誇る会場に入ると、巨大な水槽の中であぐらを組んで座る大男と目が合ってしまい、ギョッとさせられる。背中に龍の彫り物が入れられたこの人物像は、城戸自身を模りしたもので、実物よりも巨体に見えるのは、円筒形の水槽の表面が湾曲しているからだろう。水槽の背後には、天井付近から吊り下げられた厚いカンヴァスに、これまた城戸自身を写し取った「魚拓」ならぬ「人拓」。布地は深い青で塗り上げられているから、まるで深海のなかを漂う城戸の残像を見ているようだ。けれども、何より驚かされたのは、これまで水という非定型の素材からいかに彫刻的な形象を立ち上げるかという難問に取り組んできた城戸が、ここにきて人間の身体表現に大きく旋回し、なおかつ作家自身の「私性」を前面に押し出してきたことだった。身体を水に沈め、水の奥に送り出す光景から考えると、この展覧会は城戸自身がみずからのこれまでの「生」をあの世に葬り去る、象徴的な儀式だったのかもしれない。次はどのように展開するのか、注目したい。

2009/10/02(金)(福住廉)

青の肖像◎小野隆行 写真展

会期:2009/09/29~2009/10/05

新宿NikonSalon[東京都]

いわゆる「ホームレス」をモデルにした写真展。顔面に肉薄した写真は皺、目やに、滓などがあふれ、路上生活の過酷な暮らしぶりを物語っているが、全身をとらえる写真には彼らの意外なファッション性が強く打ち出されている。色彩やかたちの組み合わせ、どれをとってもいまどきの古着ファッションとほとんど大差ないことに驚かされた。

2009/10/03(土)(福住廉)

井上隆夫の世界展

会期:2009/10/06~2009/10/25

ギャラリー白川[京都府]

ギャラリー1階に並んでいるのは、一部が焼けた木の柱や、内装の一部など、建築廃材の数々。一部が焼けた木の柱や、内装の一部などだ。しかし、実はこれらは廃材ではない。古新聞やチラシを無数に重ねたものから削り出され、着色して作られたオブジェなのだ。造形があまりにも精密なため、説明を聞かなければその事実に気付かない人も多い。井上は決してフェイクを作りたいのではなく、役目を終えた紙を再び木材に戻して、新たな生命を与えたいのだという。いっぽう2階では、以前の代表作によるインスタレーションを展示。和紙で半円形を作り、軸の上に固定された花のような立体作品だ。極めて薄く軽いそれらは、人が通るだけで揺らめく。その様子は、まるで花畑のように美しかった。

2009/10/06(火)(小吹隆文)

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