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2010年02月15日号のレビュー/プレビュー

国宝 土偶展

会期:2009/12/15~2010/02/21

東京国立博物館[東京都]

つい最近まで土偶と埴輪の区別もつかなかった。区別する必要に迫られたことがなかったのだ。それほどこいつらは美術史の端っこにいたわけだ。土偶は(埴輪もそうだが)見るため、愛でるためではなく、祈るため、壊すため、埋めるためにつくられた。そんな美術品は、少なくとも有史以降は見当たりませんね。だからシカトする、というのではもったいない。これからは土偶のように祈るため、壊すため、埋めるための美術もありかも、と勇気づけられるのが正しい接し方というものだ。

2010/01/14(木)(村田真)

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デジタル・オイル・ペインティング展

会期:2010/01/06~2010/01/20

東京藝術大学大学美術館[東京都]

東京藝大と東京工大の共同研究により、まるで筆で油絵を描くような描画効果が得られるペイント・ソフト「OPS:油画描画シミュレータ」が完成したという。その研究発表とシミュレータを使って描いた作品の展示。なぜか《モナ・リザ》の模写も何点かある。このような描画シミュレータのすばかしい(すばらしく、ばかばかしい)点は、本来は欠点と見なされるような絵筆のかすれや混色のムラなどを、わざわざ人工的につくり出すことだ。たとえてみれば、100点満点じゃ大人げないからわざと間違えて90点をとるみたいな。ちょっと違うか。じゃあ、ニセ1万円札を1枚つくるのに2万円かかってしまったとか。もっと違うか。でもそんなアホえましい(アホらしく、ほほえましい)研究ではある。。

2010/01/14(木)(村田真)

まばゆい、がらんどう

会期:2010/01/06~2010/01/20

東京藝術大学大学美術館[東京都]

なんだろうこの展覧会。絵もあれば写真もあるし、インスタレーションもあれば映像もあるし、旧作もあれば新作もある。出品作家は、鷹野隆大、高嶺格、谷山恭子、平野治朗ら7人で、年齢的にはアラフォーか。みんなそこそこ知られているし、作品もそこそこイケてるけれど、飛び抜けたものがない。「まばゆい、がらんどう」というから光がテーマなのかというと、そうでもない。だいたいどういう選択規準でこの顔ぶれになったのかわからない。そんな位置づけからわざとハズレようとしているのかもしれない、不思議な展覧会。

2010/01/14(木)(村田真)

絹谷幸二「生命の軌跡」

会期:2010/01/05~2010/01/19

東京藝術大学大学美術館[東京都]

退官記念展なので、学生時代の絵から最新作まで出している。立体もあって一見華々しくバラエティに富んでいるが、立体はよく見ると正面性のある書割りだし、絵画は団体展のために制作したらしくほとんどサイズが同じで、なにかうすら寒さを感じる。入口には花輪がいっぱい並んでいた。政治家や画材店のほか、高橋英樹、石井竜也からの花輪も。夜の交遊がうかがい知れる。

2010/01/14(木)(村田真)

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俺のモナリザ

会期:2010/01/12~2010/01/15

東京藝術大学学生会館2階展示室[東京都]

上記「デジタル展」の副産物みたいな展覧会。モナリザをモチーフにした新作もあれば、昔描いた彼女(現妻)のポートレートでお茶を濁したり(佐藤教授だ)、まったくモナリザとはほど遠い抽象画を出すやつもいたり。まあ余興みたいなもんですか。余興ついでに、本日の金獅子賞はその抽象(みたいな)伊勢周平に決定。

2010/01/14(木)(村田真)

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