2010年4月1日号:号で見る|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

2010年04月01日号のレビュー/プレビュー

SEXES

会期:2010/02/19~2010/02/21

素人の乱シランプリ[東京都]

ほんとうにおもしろい表現とは、何も言うことができなくなるのかもしれない。ということをまざまざと実感させられた展覧会。ことの経緯と詳細を詳しく知りたければ、アーティストのひさつねあゆみのブログへ。ただ、ひとつ確かにいえることは、ミラクルを呼び込み、それをしっかりと捕まえて、こちらにすぐさまポンと投げ返してくるスピードとコントロールに、同展会場の素人の乱シランプリ店主であり、同展をプロデュースした山下陽光の類稀な才覚があること。ほんとうに大切なものは、結局のところ、こういうところにしかないのではないだろうか。

→ひさつねあゆみのブログ

2010/02/21(日)(福住廉)

NEW WORLD

会期:2010/01/30~2010/02/28

Island[千葉県]

千葉県柏に新たにオープンしたIslandのオープン記念展。淺井裕介、板垣賢司、いちむらみさこ、岩永忠すけ、臼井良平、遠藤一郎、大田黒衣美、大庭大介、加藤愛、川染喜弘、栗原森元、栗山斉、山本努の14人(組)が参加した。倉庫のように広い贅沢な空間を、それぞれの作品が埋め尽くした。白い壁面はもちろん、天井の剥き出しの梁にまで拡張した淺井の泥絵は、マスキングテープを剥がした痕跡を絵柄に取り入れ、剥がしたテープも再利用するなど、新たな展開を見せていた。

2010/02/22(月)(福住廉)

長谷川等伯

会期:2010/02/23~2010/03/22

東京国立博物館 平成館[東京都]

国宝《松林図屏風》をはじめ、《楓図壁貼付》《枯木猿猴図》《波濤図》など、等伯の代表作78点を公開した展覧会。信春時代の仏画から千利休や武田信玄などの肖像画、壮大なスケール感を誇る金碧画、細かくキャラクターを描き分けた涅槃図にいたるまで、等伯の幅広い筆使いを堪能できた。ライティングの妙が冴え渡った《松林図屏風》はもちろん、とりわけ目を惹いたのは《柳橋水車図屏風》。川に架けられた橋の両岸に春と夏の柳をそれぞれ描き分けた六曲一双の大作で、夏の柳は流れるような細線で描かれているものの、画面の大半は春の芽吹きで占められており、やわらかい新芽の肌を逆撫でするような触感がたまらない。生命が躍動しはじめる春のエロスを感じさせる絵だ。

2010/02/22(月)(福住廉)

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NUDE 和光大学卒業制作展 2010

会期:2010/02/20~2010/02/25

BankART Studio NYK[神奈川県]

美大の卒展といえば、おおよそどこでも似たような傾向が見受けられるが、どういうわけか和光大学の卒展はつねに異彩を放っている。今回注目したのは、北方沙依と星田大輔。北方の《CAN LIVE》は空き缶の表面を剥ぎ取り、360゜すべての面を使って短い物語マンガを描いた作品。言葉の使い方にまだ発展途上の感が否めないものの、空き缶を手に取ったときの軽さが物語のなかの寄る辺ない浮遊感を巧みに引き出していた。星田の《愛は慣性上に宿る》は、手塚治虫のマンガ『三つ目がとおる』の1ページにフキダシのセリフを勝手に当てはめ、そのページのなかでコマ割りを入れ換えながら物語を編み上げていく作品。だから十数頁にわたるマンガは、ほとんど同じ絵が続くことになるが、絶妙な言葉のセンスとコマ割りの工夫で、読者を決して飽きさせない。天才の絵を臆面もなく流用し、しかも同じ絵を何度も何度も使い倒すという図太さが、昔ながらのシミュレーショニズムを越えた凄みを醸し出していた。

2010/02/24(水)(福住廉)

シリン・ネシャット 男のいない女たち[第2回恵比寿映像祭プログラム]

会期:2010/02/19~2010/02/28

東京都写真美術館[東京都]

シリン・ネシャットが初めて手掛けた長編映画。イラン革命前夜を背景にして揺れ動く4人の女性たちの生き方を寓話的に描き出した。それぞれの物語が断続的に紡ぎ出されながらも、最終的にはあるひとつの邸宅を舞台に一本化されるという展開に見られるように、映画的な文法を的確に押さえながらも、従来の詩的で謎めいた映像美はしっかりと描き出している。フェミニズム論者による批評が待望されるが、ベタな美しさを批判的に脱構築してきたフェミニズムが、この映画の美しさをどのように評価するのか、気になるところだ。

2010/02/25(木)(福住廉)

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2010年04月01日号の
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