artscapeレビュー

2010年06月15日号のレビュー/プレビュー

アイデンティティ、ボディ・イット

会期:2010/05/21~2010/06/19

nca[東京都]

東谷隆司の企画で、サラ・ドラタバディ、ジャナイナ・チェッペ、片山真理ら女性アーティスト6人が出品。キャプションがないのでどれがだれの作品かわからないが、入口横にあった映像作品に目が釘づけになった。照明器具を掲げて彫刻のようなポーズをとる全裸の女性が、自分で明かりを消したりつけたりするたびに、目を閉じたり開けたりするという行為を繰り返すという映像。ただそれだけのバカバカしい映像に、なぜそれほど惹かれたのかというと、おそらくそこに、彫刻、女性ヌード、光と闇、眼差しといった美学・美術史のエッセンスがつまっているからではないかしら。いいなあ、こういう軽くて重いの。

2010/05/25(火)(村田真)

不在に忍び寄る──イランと向かい合って

会期:2010/05/19~2010/06/12

東京画廊[東京都]

日本ではほとんど紹介されてこなかったイランのアーティスト8人の展示。といってもイラン国内で現代美術を続けるのは難しく、多くは国外で活動しているらしいが。作品が写真や映像、ドローイングなど軽便なものばかりなのは、運ぶのが容易だからだろう。ひとつだけ、鉢植えのゼラニウムを床に置き、その影を床に直接描いたインスタレーションがあったが、これは作者のドラタバディ(前項ncaにも出品)が東京に住んでいるため可能になったという。少なからぬ作品が戦争を想起させ、アーティストの役割について考えさせられる。

2010/05/25(火)(村田真)

椿会展2010「トランス・フィギュラティヴ」

会期:2010/04/10~2010/06/13

資生堂ギャラリー[東京都]

絵画ふたり(伊庭靖子、丸山直文)に彫刻ふたり(祐成政徳、袴田京太朗)。以上4人は作品の予想がつくが、毎回なにを出すかわからず台風の目になってきたのが、塩田千春とやなぎみわのふたりだ。今回、塩田はパフォーマンスを収録した6年ぶりの映像作品、やなぎは超特大から超極小までの女性靴を出品。やはりこのふたりが目立っていた。展覧会としてはいいバランスかも。

2010/05/25(火)(村田真)

『conditions』

発行所:Zoom Grafisk AS

発行日:2009年

2009年創刊の新しいノルウェーの季刊の建築雑誌。タイトルは、建築とアーバニズムの「条件」を議論するための雑誌であることを示している。初号の冒頭には、イメージやブランドといった表面的な価値を重視する建築雑誌に対して、より本質的な価値を「条件」とともに考えようとしていることと、建築やアーバニズムは、それを成り立たせている社会的、政治的、経済的、文化的「条件」と切り離すことができず、その「条件」とともに議論をしていく、という方向性が触れられている。これまでの特集が面白いので紹介しておく。この一年の特集は、01「進化のための戦略」02「コピーと解釈」03「魅惑的な妥協」04「追加された価値の生産」である。HPを見ると、次の企画「メタコンペティション」も興味をそそられる。つまりコンペティションのコンペティションであり、建築のコンペのポテンシャルが問われているという。日本では新しい雑誌が生まれにくい今、今後のさらなる展開が期待されよう。

http://www.conditionsmagazine.com/

2010/05/25(火)(松田達)

深堀隆介「金魚浴2010」

会期:2010/05/15~2010/06/13

エキジビション・スペース(東京国際フォーラム・アートショップ内)[東京都]

枡や樽に金魚が泳いでる。と思ったら動かない。凍ってる? と思ったら、樹脂に描いた金魚の絵だった。数年前からアートフェアでしばしば見かけていたが、個展で見るのは初めて。金魚ってサイズもかたちも絵筆でサッと一刷毛したかたちと似ているので、絵心をくすぐるんですね。

2010/05/27(木)(村田真)

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