artscapeレビュー

2010年07月01日号のレビュー/プレビュー

福村真美 展

会期:2010/06/01~2010/06/13

ギャラリーモーニング[京都府]

前回の個展では琵琶湖畔の風景やプールのある風景など、水辺を描いた作品が印象深かったが、新作では一転して動物園がテーマになっていた。昼寝するチーターや3羽のフラミンゴを描いた牧歌的な作品はその典型だ。しかし、私が気になったのは、主がいないペンギン用の水槽と思しき風景。エメラルドブルーを基調とする水面と灌木の緑がとてもみずみずしい。やはりこの人の真骨頂は青や緑系の使い方にある。

2010/06/01(火)(小吹隆文)

黒河兼吉 陶磁器デザイン展

会期:2010/06/01~2010/06/13

アートライフみつはし[京都府]

シャープで洗練された造形性が際立つ陶芸展だった。作品は、花瓶、一輪挿し、ランプシェードなど。すべて型により制作されており、工芸品というよりはプロダクト・デザインと呼ぶべきエッジの効いた仕上がりだった。筆者が見る限り、陶芸家には手びねりの不規則な歪みや風合いを重視する人が多いようだ。そんななか、一貫して硬質な楷書の美を追求し続ける黒河の存在は貴重だと思う。

2010/06/01(火)(小吹隆文)

白岡順 写真展 梅雨と白雨

会期:2010/06/01~2010/06/27

ブルームギャラリー[大阪府]

白岡といえば、暗いトーンで窓越しに外の風景を撮ったモノクロ写真が連想される。本展でもそうした作品が、一部に真反対の白いトーンの作品も含めながらずらりと30点も並んでいた。何よりも驚かされたのは出品作品の制作期間。1960年代後半から2000年代まで約40年間にわたっているではないか。それだけの長期間、作風にまったくブレがないとは驚くべきことだ。白岡の禁欲的な制作態度に改めて感じ入った。なお、本展の作品はすべてニュープリントである。それゆえ均質性が一層強調されたのかもしれないことを最後に付け加えておく。

2010/06/02(水)(小吹隆文)

本堀雄二 展─紙の断層 透過する仏─

会期:2010/06/01~2010/06/28

INAXギャラリー2[東京都]

文字どおりダンボールで作られた仏像。ユニークなのは、スライスしたダンボールを貼り合わせて仏像のフォルムを形作っているところ。だから空間の隙間がダンボールの軽量感と相俟って、仏像らしからぬ浮遊感を醸し出している。じっさい天井から吊るしていたから、そうとう軽いのだろう。台座の上に重量感のある素材を置くことで量塊性を謳いあげる近代彫刻へのアンチテーゼのように見えた。

2010/06/03(木)(福住廉)

大森悟 展 花かげ『存留』

会期:2010/05/31~2010/06/05

Gallery-58[東京都]

会場の中央に小ぶりの冷凍庫がひとつ。蛍光灯で照らされた内部を覗き込むと、積もり積もった霜柱に囲まれて、満開の桜がぎっしり詰め込まれている。その薄い桜色を寝床にして、一匹の鮮やかな瑠璃色の小鳥。来るべき目覚めのための長い休眠なのか、それとも物質を腐敗から救出する永劫的な眠りなのか。

2010/06/03(木)(福住廉)

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