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2010年10月15日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:せんだいスクール・オブ・デザイン

東北大学[宮城県]

開講:2010年11月
建築デザイン系大学院生と、さまざまな領域の社会人クリエイターを対象とした新しい学校。東北大学と仙台市が連携し、地域の活性化を図る人材を養成することが目的という。具体的には、PBLスタジオ、Futureラボ、Interactiveレクチャーという三つのメソッドによって学習の機会が提供される。PBLスタジオは、少人数制のデザイン・スタジオで、東北大学の教員が中心となり、メディア、環境、社会など、複数の軸が設定され、具体的なプロジェクトに取り組む。Futureラボは、石上純也、平田晃久らが講師として招聘され、デザインの可能性を拡張するリサーチ・スタジオになるという。Interactiveラボは、領域横断的なレクチャー・シリーズで、さまざまなスタジオの受講生らが一堂に会することになるという。つまり、プロジェクトを通して多分野の人材が、コラボレートしながらデザイン教育を受ける。驚くべきことに、受講は無料。半年か一年単位の受講となり、修了すれば、大学によっては単位として認められる可能性もある。建築の領域を拡張する新しいタイプの学校として、開校と今後の展開が注目されるだろう。

URL=http://sendaischoolofdesign.jp/

2010/09/22(水)(松田達)

私を見て! ヌードのポートレイト

会期:2010/07/31~2010/10/03

東京都写真美術館 3F展示室[東京都]

東京都写真美術館の所蔵作品を中心としたコレクション展は、今年は「肖像」をテーマとする連続企画展である。その第二弾として「ヌードのポートレイト」展が開催された。ヌード・フォトは多くの場合、「撮る側」(その多くは男性)の視点で語られることが多い。ところがこの展覧会は、タイトルを見てもわかるように「撮られる側」の自己主張=「私を見て!」に注目している。
たしかにヌード撮影には写真家とモデルの共同作業という側面があり、一方的な「撮る─撮られる」という関係が、なし崩しに解体してしまうこともありうる。ただし、展示の流れは「第1章 邂逅」「第2章 表現」「第3章 家族」「第4章 自己(アイデンテティー)」の四部構成で、写真の黎明期からピクトリアリズム、モダニズムの時代を経て、より対人的な関係意識が強い現代写真に至るというきわめてオーソドックス、というより紋切り型のもので、せっかく打ち出した「私を見て!」というモデルの側からの視点が貫かれているとは思えなかった。また、写真に付されたキャプションが、当たり障りのない解説に終始しているのも気になった。ラリー・クラーク、ナン・ゴールディン、ジョエル・ピーター・ウィトキンといった、むしろ丁寧な解説が必要な作品にキャプションがないのはどういうわけだろうか。「問題作」を避けたとしか思えないのが残念だ。
小関庄太郎の、女子学生をモデルにしたという1932年の連作、深瀬昌久の「幸代」シリーズ(1961年)など、あまり展示される機会がない作品をじっくり見ることができたのはよかった。まだまだ眠っている収蔵品がたくさんありそうだが、どうやらコレクション展の限界も見えてきたようだ。

2010/09/24(金)(飯沢耕太郎)

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前衛★R70展

会期:2010/09/13~2010/10/02

ギャラリー58[東京都]

赤瀬川原平、秋山祐徳太子、池田龍雄、田中信太郎、中村宏、吉野辰海という全員70歳超の老練アーティスト6人展。さすがに現在「最」はとれたものの、半世紀ものあいだ真剣勝負であれ冗談半分であれ「前衛」として活躍してきた方々、なにも言葉はありません。

2010/09/24(金)(村田真)

諏訪直樹没後20年追悼展 黙契の歳月

会期:2010/09/13~2010/09/25

コバヤシ画廊[東京都]

諏訪とほぼ同じ時代を生き、似たような問題意識を抱えていた岡村桂三郎、鈴木省三、中上清、山本直彰に諏訪を加えた5人展。同展を企画した北澤憲昭氏は案内状のなかで、「彼が没したのちの20年は、まさに絵画隆盛の時代であり、次々と繰り出される新しい絵画の試みは、いまでは分厚い層を成している」と書いているが、どうだろう。彼らの絵画の試みと現在の絵画の隆盛にはあきらかに断絶があり、両者のあいだにはなんの関係もないように思える(岡村は例外かもしれない)。諏訪の名前がほとんど忘れ去られているのはそのためだ。そこが悲しい。

2010/09/24(金)(村田真)

金子奈央 展〈華身〉

会期:2010/09/22~2010/10/05

銀座三越東館8階ギャラリー[東京都]

弱冠25歳にして銀座三越で個展。その清楚で簡潔な女性像は「古きよき時代」の三越のポスターに使われたとしてもおかしくないような、大正ロマンの香りをたたえている。まさに三越にぴったりのイメージだが、東郷青児みたいに包装紙にまで使われて消費されないよう祈るばかりだ。

2010/09/24(金)(村田真)

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