artscapeレビュー

2011年02月15日号のレビュー/プレビュー

「CHEFS-D’OEUVRE ?」展/博物館建築1937-2014

ポンピドゥー・センター メス[パリ]

「CHEFS-D’OEUVRE?」展 2010年5月12日~2011年1月17日
「博物館建築1937-2014」の展示があるギャラリー2は、2011年11月7日まで

坂茂が設計したメスのポンピドゥー・センターを訪問したが、ロマネスク・リバイバルの駅舎から、フランスとしては垂直性がかなり強めなゴシックの大聖堂まで、普通に街並みの建築のレベルが高いことに驚かされた。ビルバオでも、フランク・O・ゲーリーによるグッゲンハイム美術館だけではなく、普通の建物が都市の底力をもっていて、同じ経験をしたことを思いだす。ポンピドゥーは新しい街のランドマークにもなると同時に、そこから街の風景を眺めるギャラリーチューブを張りだしている。
オープニング展は、4フロアともに異なる方法によって、ホワイトキューブを崩す、意欲的な展示空間を演出していた。3階では、近代美術館(1937)以降の、フランスの美術館の特集展示を開催しており、ラストのゼロ年代はSANAAのルーヴル・ランス分館、坂茂のポンピドゥー、隈研吾のマルセイユのプロジェクトが続く(三名とも慶応大学で教鞭をとっていた)。フランスにおいて、日本人の建築家が高く評価されていることがうかがえるだろう。4階では、アンドレ・マルローが美術の写真を切り貼りしたブックコレクションや、モダニズムの関連書籍を展示していた。また、ヒッチコック『めまい』とデ・パルマ『殺しのドレス』と、そのポストモダン的引用、Brice Dellsperger「ボディ・ダブル 15」の映像を紹介しており、これらを見ながら、ジム・ジャームッシュの映画『リミッツ・オブ・コントロール』の美術館シーンと『めまい』の類似に気づく。

2011/01/03(月)(五十嵐太郎)

第19回〈現代日本の建築家〉展 GA JAPAN 2010

会期:2010/11/20~2011/01/23

GAギャラリー[東京都]

今回は、1930年代生まれの磯崎新から70年代生まれの藤本壮介まで、9組の日本人建築家の新作を紹介していたが、海外のプロジェクトが多いことが印象的だった。国内はわずか2つだけである。とくに韓国は3つ、中国は2つだ。狙ったわけではないだろうが、いかに日本に挑戦的な公共の仕事が減っているかを結果的に示していた。世界的に日本の建築家が高く評価されている一方、国内の仕事がないのは、なんとも皮肉である。

2011/01/04(火)(五十嵐太郎)

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麻生三郎 展

会期:2011/01/05~2011/02/20

京都国立近代美術館[京都府]

戦時中に松本竣介、井上長三郎らと新人画会を結成、戦後1964年までは自由美術家協会に参加し、人間の根源的存在イメージを追求した麻生三郎の展覧会。没後10年となるが、今展でそれが謳われていないのは、その暗い画風や活動から、戦中・戦後に重心を置いて語られてきたこの画家を、過去の人として回顧するにとどまらず、今日的問題につなげて鑑み再考しようという意図があってのこと。会場には1930年代から晩年までの 油彩、素描、立体など約130点が展示されている。時代ごとに分けた3部の構成だが、画面に混濁する赤い色彩や、闇の背景から対象をあぶり出そうとするような図と地の区別が曖昧な絵画は、不安感をともなう緊張感と重たい空気に覆われている。数のヴォリュームもさることながら、それらの暗い画面に表われた、世の中と対峙し自らと現実の関係や自己を凝視する画家のまなざし、その執拗な追求は、こちらが尻込みしそうなほどの迫力。一緒した両親は、はじめは一点ずつじっくりと見ていたのだが、「だんだん押しつぶされそうな気分になって最後はぐったりしてしまった」と言っていた。たしかに、じっくりと見れば見るほど精神的にも疲れてしまう展覧会だった。自らの目で徹底的に世界を見つめようとする態度とそれを絵画に表わそうとする彼のエネルギーは圧倒的だ。しかし、だからこそ若い人たちに薦めたい展覧会でもあった。

2011/01/04(火)(酒井千穂)

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加藤泉──日々に問う

会期:2010/09/18~2011/01/30

彫刻の森美術館 本館ギャラリー[神奈川県]

家族で温泉旅館に来たついでに寄る。彫刻の森はもう10年ぶりくらいか。1階ロビーでは植栽の前にカラフルな木彫が置かれていて、まるでアフリカかニューギニアの工芸品みたい。2階のギャラリーも木彫が中心で、絵画はつけたし程度。やはり彫刻の森美術館だからね。こう見ると絵画が先か彫刻が先かわからなくなるが、でも彼の作品の特異性はイメージにあると思うので、個人的には絵画のほうがおもしろい。子どもは喜ぶか、さもなければ不気味がると思ったら、あまり反応せず。彼らは屋外にある巨大なハンモック状の「ネットの森」で遊んでるほうがいいみたい。やはり子どもは視覚より触覚優先の動物なのだ。彫刻も触覚性重視だけど、触れないからね。それにしても野外彫刻は寒い(作品が「寒い」という意味ではないすよ)。

2011/01/05(水)(村田真)

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第4回現代日本彫刻作家展

会期:2010/12/11~2011/02/06

彫刻の森美術館 アートホール[神奈川県]

30人の彫刻家が公募団体展の閉塞感を打ち破るために始めたグループ展。という触れ込みだが、それぞれ誠実に「彫刻」をつくっておられるはずなのに、加藤泉ほど際立った作品はひとつもなかった。あったらこっちに出すより、あっちで個展を開いているだろう。

2011/01/05(水)(村田真)

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