artscapeレビュー

2011年04月15日号のレビュー/プレビュー

建築講演会 沖縄建築の可能性について

会期:2011/03/18

聖クララ教会[沖縄県]

震災翌日に予定されていた日本郵船歴史博物館の「船→建築」展に関連した遠藤秀平との対談など、幾つも仕事のキャンセルが続き、震災後の初仕事となったのが、東日本から遠く離れた沖縄での講演会。素晴らしきモダニズム建築の聖クララ教会にて、「沖縄建築の可能性について」のレクチャーを行なう。ゲニウス・ロキや批判的地域主義などの基本概念をレビューしつつ、赤い瓦や沖縄構成主義などについて語る。続いて、入江徹の司会により、対談と質疑応答。めずらしく、若手の出席者から多くの質問があり、その後の懇親会でも熱い議論が続く。批判的に掘り下げると、これはとても面白いテーマである。沖縄は震災とは無関係の地と思いきや、東北の建材メーカーの被災により、部材が入手しにくくなっているという。また国際通りの路上では、義援金集めの活動が始まっていた。

2011/03/18(金)(五十嵐太郎)

A CONVERSATION WITH MATHIEU MERCIER TAKAAKI IZUMI YUKI KIMURA SOSHI MATSUNOBE KAZU OSHIRO KOKI TANAKA ABOUT ABSTRACT OBJECTS

会期:2011/03/19~2011/04/24

MUZZ[京都府]

マチュー・メルシエと泉孝昭、木村友紀、松延総司、大城カズ、田中功起の作品が並ぶ会場。作家達の作品には、ミニマル、ポップ、コンセプチュアルという要素が共通するだろうか。それぞれの作品についてもだが、「オブジェはどの時点から抽象的な概念となるのでしょうか? オブジェはそれ自身のコンセプトの裏にとけ込むことはできるのでしょうか?」という開催概要にあった問いを考えるのが面白くなってくる。うろうろと会場を徘徊してゆっくり楽しみたい展覧会。

2011/03/19(土)(酒井千穂)

GEIBUN2─富山大学芸術文化学部第2回卒業制作展─

会期:2011/03/08~2011/03/23

高岡市美術館[富山県]

那覇─小松空港を経由し、高岡へ。小松駅にて、東京─仙台の新幹線をキャンセルしようとしたら、駅員に新幹線以外の鉄道なら行けるのでは? と言われ(もちろん、つながっていない)、ああ、ここは被災地と遠いのだと実感した。高岡市美術館の富山大学芸術文化学部による卒業制作展に関連して、トークショー「ヴェネチアビエンナーレ国際建築展について」を行ない、建築と映像の学生の作品を講評する。
五十嵐賞を出すということで、建築からは、一番造形力のあった谷間を横断するジグザグ建築の三上恵理華と、コートハウスのサンプルを集め、上下をばらして再度組み合わせ、バリエーションを増やした橋本千夏、そして造形芸術コースからは、感情にまつわる架空の昆虫を大量に制作した川越ゆりえの「感情標本」を選ぶ。なお、卒制展の打ち上げでは、東北大から富山市の実家に疎開した研究室の椚座くんと再会した。

2011/03/20(日)(五十嵐太郎)

ホンマタカシ「ニュー・ドキュメンタリー」展/高嶺格「Good House, Nice Body ~いい家・よい体」

会期:2011/01/08~2011/03/21

金沢21世紀美術館[石川県]

ホンマタカシのニュー・ドキュメンタリー展を見る。最終日のため、長蛇の列。双眼鏡の部屋は時間がなく、見ることができなかった。東京の巡回展で見ることにしよう。狩猟の後、生き物の血が白い雪に残る「trails」やロサンゼルスの野生動物の「wild corridors」と、人工的な風景であるマクドナルドのMシリーズが対比的で興味深い。
同時開催の桑山忠明展は、ミニマルな立体を反復することにより、金沢21世紀美術館の空間がきわだつような作品である。しかし、部屋に入るたび、監視員から作品には近づくなと必ず注意される鑑賞システムは、なんとかならないものか。鑑賞者を信じない、この警告を聞くこと自体が、作品の一部に組み込まれているかのようだ。
高嶺格の展示「いい家・よい体」は、二度目の訪問だ。ワーク・イン・プログレスなので、作品も少し変化。昨年、高嶺さんから海外での展示で、土嚢を使いたいという相談のメールをもらい、渡辺菊眞さんという建築家がいると教えたのだが、その後、二人のコラボレーションが続き、この作品に至ったようだ。廃材を活用し、反・現代住宅的な空間が、プロジェクト工房にて出現している。

2011/03/21(月)(五十嵐太郎)

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中村 趫「メランコリアの楽園」

会期:2011/03/19~2011/04/09

parabolica-bis[東京都]

中村 は1970年代にサイケデリック・ロックバンドに参加し、その後写真家に転身したという変わり種。フェティッシュな美意識に裏打ちされた、装飾過剰のゴシック・ロマン風のイメージに徹底してこだわり続ける姿勢も、日本ではかなり珍しい。主に『夜想』や『TH(トーキングヘッズ)』などの耽美系の雑誌で作品を発表してきたが、今回の東京・浅草橋parabolica-bisでの個展は、彼の作品世界の全貌を見渡すことができる貴重な機会となった。
1Fと2Fの3つの部屋を使って「interference 」「ruinous flowers」「elysian fields」の3部作が展示されていた。異形の人物たちの畸形的なポートレート「ruinous flowers」、寺島真理が監督した映画『アリスが落ちた穴の中』(中村が写真と照明デザインを担当)のスチル写真として制作された「elysian fields」もなかなか見応えがあったが、なんといっても圧巻なのはこれまでの彼の作品の集大成というべき「interference」のパートである。人体、物質、風景が有機的に絡みあい、全体に湿り気を帯びたイメージのタピストリーを織り上げている。その眺めは、たしかに日常世界の秩序から逸脱するものだが、どこか懐かしい見世物小屋を思わせるところもある。甲斐庄楠音とヤン・シュヴァンクマイエルを合体させたような幻想空間の強度の高まりを、しっかりと確認することができた。
なお、1Fのショー・ウィンドーには人形作家の清水真理とコラボレーションした作品が展示してあるのだが、そこに津波の写真が大きく使われていた。彼のイマジネーションを触媒として、何か予感のようなものがひらめいたのだろうか。

2011/03/23(水)(飯沢耕太郎)

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