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唯美主義 Aestheticism


芸術をあらゆる有用性から解放して自己目的化をはかる立場。芸術の自律性概念はカントに遡るが、19世紀半ばフランスのC・ボードレール、T・ゴーティエの主張以降、「芸術至上主義(l'art pour l'art)」と結びついて特に19世紀末のイギリスで唯美主義運動として展開される。同理念を擁護した「十時の講演」(1885)で知られるJ・M・ホイッスラーが代表的唱道者。芸術の意味要素より形式要素の自律的な価値を優先する姿勢は近代絵画の理論的前提となる。芸術家の個性を圧迫する効率優先の画一的工業社会の拡大に反発して反社会的、耽美的な芸術思潮とも結びつきやすく、J・ラスキン、W・モリス等、芸術と社会との接点を求める立場とは対立した。一方、すべての面での審美性の追求という点で、絵画や文学はおろか、生活様式やファッションにいたるまで広く影響力を及ぼした。ほか、D・G・ロセッティ、E・バーン=ジョーンズ等後期ラファエロ前派、A・ムーア、A・ビアズリーなどが代表的芸術家。

(陳岡めぐみ)

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