寓意、寓意像の意。語源はギリシア語の「allegoria」で、「別のものを語る」という意味である。抽象的な概念や思想を、具体的形象によって暗示する表現方法であり、その主要手段は擬人化、擬動物化である。「正義」の観念を剣と天秤をもった女性像で表わしたり、「狡猾」を狐で表現するなどがその例である。また白色が清純を、聖母マリアのマントの青色が「天の女王」の意味を表わすといった、絵画的表現もそれと言える。アレゴリーの他の特色として認められるのは善悪の対比による宗教や道徳上の教訓、風刺の要素をもつことで、これは特に文学的表現において用いられる。例えばイソップやラ・フォンテーヌの寓話(fable)にみられる。歴史的にはギリシア人が神話中の人物を哲学的真理の現われとして解釈し始めたときに起こり、さらにキリスト教神学と中世の実在論哲学において発展した。16−17世紀にはチェザーレ・リーパの『イコノロジア』などの、図像学において最もよく扱われた。またアレゴリーはシンボルとの区別において考えられてきた。この違いを明確に確立したのはシェリングである。彼は抽象概念である「普遍」と擬人表現として表わされる「特殊」が一体化しているとき、それをシンボルとし、ある表現において特殊が普遍を意味する、あるいは特殊が普遍を通して直観される場合をアレゴリーであるとした。現代においても芸術表現の一手段としてアレゴリーは使われ続けたが、作品制作の主導的な立場として復活したのは、ポストモダニズムの台頭によってである。具体的な芸術家としては、F・クレメンテ、A・キーファー、H・シュッテンドルフらであり、例えばキーファーは聖書、神話、歴史的場面、ゲーテの『ファウスト』などのさまざまな文化的表象を、現代人の生活のアレゴリーとして作品に取り込んだ。
(山口美果)
|