アート・ディーラー、コレクター、美術関係者の交流の場として開催される美術の見本市。一般の美術愛好者に公開されてはいるが、ビエンナーレやドクメンタといったアート・イヴェントに比べ、統一キュレーターやテーマなどを掲げずに、多くの場合大都市のメッセ会場で各ディーラーが取り扱う作家の作品を個別に展示し、美術市場の発展を主目的とする点で異なる。ジャンルや参加者の対象(国内等)を限定した見本市は古くからあるが、国内外から数十カ国、数百の画廊が参加し、数日間で万単位の動員をはかる国際的な近現代美術のアート・フェアの隆盛は、航空輸送による迅速な搬送と、ディーラー間の迅速な世界規模での情報交流が可能となったことによる。ケルン(Art
Cologne/ 1967−)やバーゼル(ART BASELまたはTEFAF: The European Fine Art Fair/
1969−)といった代表的なアート・フェアは60年代に始まっているが、これはニューヨークのディーラー、L・カステリがもたらした美術取引に対する新しいアプローチの導入、すなわち同時代の若手作家の作品を流通させるために各国間ネットワークを形成するという手法と期を同じくする。アート・フェアは超都市次元で開催される非権威的な「現代美術館」であるとする評価が成立する一方で、各フェアは新味を模索して特別展や新セクションを立てている。上記以外の主要なものとしてはニューヨーク(国際美術フェア)、ロサンゼルス(ART/
LA)、ベルリン(ART FORUM BERLIN)、パリ(FIAC)など。なお、日本では1990、91年に東京・晴海で「東京アートエキスポ」、92−95年に横浜で「NICAF国際コンテンポラリーアートフェア」(95年よりフェスティヴァル)が開催された。
(三本松倫代)
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