「新しい芸術」。1890年代から1910年代、欧州各地で展開した国際的な世紀末芸術運動・様式の仏語名称で、日本趣味推進者として名高いパリのS・ビングの装飾美術品店名(1895年開店)に由来。英語でモダン・スタイル、独語でユーゲント・シュティールなど、名称は多々ある。代表的雑誌に『The
Studio』。アーツ・アンド・クラフツ運動、象徴主義とも連動。折衷的歴史主義に陥った既存の芸術様式を革新し、高等芸術・応用芸術間の垣根を払った総合的な生活芸術様式の創出を目指す。造形的特色はジャポニズム等の影響を受けた植物文様や有機的曲線の多用。近代工業社会への反発から手工芸的装飾芸術の復権を企図したが、結果的に富裕層のみを受容者としたことで早くに批判も招く。1900年パリ万国博覧会を運動の頂点とした後、大量生産を求める時代要請に応じられず急速に衰退した。50年代の一連の展覧会によって再評価が進展。A・ビアズリー、H・ヴァン・デ・ヴェルデ、V・オルタ、E・ガレなどが代表的作家。
(陳岡めぐみ)
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