広義には芸術に関連したあらゆる「場」のこと。このなかには美術家、美術評論家、ギャラリー、美術館、アマチュアの画家、絵画教室等全てを含む。狭義ではアート・ワールドはアート・シーンと対照される。この場合、アート・ワールドは美術の歴史をふまえ、常に同時代に対して意識的に発言する「場」であり、その時代の芸術に規範として働くと考えられる。一部の“権威ある”芸術家や評論家、画廊、美術館等がこの「世界」に含まれる。一方、アート・シーンはそれ以外の、芸術に関連した「場」全てである。この区分けには、美術市場などの経済的な要素も影響している。ただし絶対的な差異が常にアート・ワールドとアート・シーンのあいだに存在しているわけではなく、とりわけ1990年代以降アート・ワールドという言葉から規範的な力がなくなりつつあるように思われる。
(苅谷洋介)
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