1996年8月1日から25日にかけて東京ビッグサイトにて開催された企画展。表題の「アトピック」とは特定された場所や主題を意味するtopicの否定表現であり、沖縄でのアーティスト・イン・レジデンスやインターネットを利用したサラエボとの接続など、必ずしも会期・会場に限定されない広範な作品展示が意図された。そもそもこの企画展は、青島幸夫東京都知事(当時)の決断により世界都市博覧会が中止された結果、損失を被った業者や代理店のための保障事業として実施決定されたもので、さまざまな関係者の利害や思惑が絡まった経緯ゆえ準備は難航、展覧会キュレーターを委託された柏木博は、建畠晢、四方幸子、高島直之、岡崎乾二郎の四氏に展覧会企画への協力を要請、結果的に展覧会は5人のキュレーターによる6部門の展示と観客参加のインターネット体験ゾーンからなる大規模なプロジェクトとして構成された。会期前より、沖縄でのアーティスト・イン・レジデンスが地元住民との摩擦を生んだり、また会期中にはシェリー・ローズのバルーン作品に対する「検閲」が問題視されるなど、大きな反響とは裏腹にその斬新な企画趣旨は必ずしも理解されたとは言い難かったが、1990年代の現代美術を多角的に見渡そうとしたその意図は世界的にも類例がないものであり、しばらく時間を経た今後は別の視点からの評価も期待される。
(暮沢剛巳)
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