フランス西南部ポワトー・シャラント県に位置する16−17世紀のシャトー・ドゥ・ワロン(ワロン城)は、国有財産とされながら長年にわたり非公開であったが、1987年、現代美術と文化遺産とを融合させる初めての試みとして、「メルテム」展が開催された。その後、FNAC(フランス国立現代美術基金)の購入作品や、ディジョンのコンソルティウムの収蔵品が企画展として展示された後、92年からは地方分権化政策の一環として、地方自治体などの後援を受け、元ポンピドゥー・センター館長ジャン=ユベール・マルタンを館長に迎えて、現代美術センターとして開館した。ジャン=ユベール・マルタンは、フォンテーヌブローを模した16世紀の壁画《トロイア戦争》などが遺された城内の回廊で、ルネッサンスの「蒐集品陳列室」に着想を得た現代美術の企画展示を行なった。センターという名称ながら、常設される現代美術のコレクションもある。地域の住民も参加する形で作家に制作を依頼した作品が収蔵品に加えられた他にも、インタラクティヴな形の催しが多い。
(柴田勢津子)
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