「現代美術」という概念をいつ誰がどのような意図で創案したのかは不明だし、また時間が絶えず流れ続けるものである以上、その範囲を特定することは誰にもできない。大まかには、20世紀以降の「近代美術」の範疇に括れない新しい動向の総称というコンセンサスが成立している観があるが、それは21世紀の到来と同時に修正を余儀なくされるだろうし、またまさしくリアルタイムの現在においても、「現代美術」の枠に収まらない多くの“古典的・近代的”な作品が産み出されている。『美術史の終焉?』(元木幸一訳、勁草書房、1991)において、H・ベルティングは現代における異なる表現様態の並行関係を「古典的近代」と「現代美術」として区分しているが、ある意味ではその区分は、アカデミズムの研究対象である「美術史」と、ジャーナリズムや批評が追究する「現代美術」との制度的分割にも対応しているように思われる。
(暮沢剛巳)
|