私企業が主導する芸術活動の総称で、その範囲は展覧会などの事業予算やアーティストへの助成金の出資を骨子とするメセナ活動と重なる部分が大きい。一般に欧米では、芸術活動への参画はコーポレート・アイデンティティ(CI)を対外的にアピールする重要な要素であるとみなされている。展覧会への出資、企業コレクションの収集、スカラシップ事業の運営など、それぞれどのような特色を打ち出すかで企業イメージに大きく影響するからだ。確かに巨大企業ともなれば、その事業予算は個人コレクターや中小美術館をも遙かに凌ぐものであり、社会に対する影響力も大きい。嫌煙権運動の高まりに配慮して、例年多額のCI予算を計上している米・フィリップ・モリス社の各種文化事業などは、コーポレート・アートの典型例と言えよう。日本でも、企業のCI戦略は
1980年代に市民権を獲得したが、多くの企業の活動は、バブル期にオークションで巨額の近代絵画を購入するなど、投資効率のみを重視したCI活動に終始し、不況で業績が悪化するやたちまちコレクションを売却するなどして、国際的にも非難を浴びた。長らく景気が低迷する現在、コーポレート・アートの在り方があらためて問われている。
(暮沢剛巳)
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