1997年、政府が行政改革の一環として、省庁から国立博物館、美術館、研究所を含む88機関の運営を切り離し、独立行政法人化する方針を決定した問題。東京、京都、奈良の国立博物館、東京、京都の近代美術館、東京の西洋美術館、大阪の国際美術館の7館と東京の文化財研究所が対象。1988年、中央省庁等改革基本法を制定し、「国立博物館・美術館に関する懇談会」を発足させて、2001年4月の実施にむけ計画を進めている。こうした国の決定に対し、
1998年、美術史学会東支部が2回のシンポジウムを開催したほか、『ドーム』、『エル・アール』といった美術雑誌も大きくこの問題を取り上げた。単年度予算に縛られない弾力的な運営が可能となる、権威主義的で旧態依然としている点を改め行政サービスを重視する方向に向かう、といった賛成意見の一方で、効率化の目的で作品の収集、保存、調査、研究が阻害される、入館者数からだけでは正しい評価のできない調査・研究の評価をどうするか、税制の改革なしには民間の寄付に頼れない、といった反対意見が出された。
(鷲田めるろ)
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