制作当日の日付を河原温(1933−)がキャンヴァスに油彩で描く絵画の連作のこと。「今日」(Today)シリーズとも言う。河原は1966年以来毎日のように、西暦の年月日をタイポグラフィで、濃い平塗りの画面に白抜き風に描き込んでいる。その日付は基本的に旅行先の土地の言葉で描かれている。大きさや色合いは数種類あり、その微妙な差異が展示の際に生きてくる。初期の頃はその日の出来事の記録が文章で副題としてつけられ、新聞紙面からの抜粋が添えられていたが、後に曜日や日付だけになる。日付という私たちが共有する時間の観念を通して、鑑賞者に働きかけるのだ。時間の流れに自己の位置を刻むのだが、極力主観性を排除すべく記号表現に終始するのだ。河原温にはこの連作同様、時間を問題とする、絵葉書に"I
Got Up(私は起きた)"と書いて人に送付する連作などもある。彼の代表作である日付絵画は現在もなお続けられており、2000点を超えるその作品群はコンセプチュアル・アートの代表的な存在だとみなされている。終わりのない、規定的な過程によって制作される連作である日付絵画は、ミニマルでありつつ、プロセスを重んじるコンセプチュアル・アーティストであるソル・ルウィットたちに大きな影響を与えた。
日付絵画の作品例:
《金曜日(Friday)》油彩/キャンバス、25.5×33cm。描かれている日付"MAR.2, 1979"
(三上真理子)
関連URL
●河原温 http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/o-kawara.html
●S・ルウィット http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/s-lewitt.html
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