紙などを輪郭に沿って切り抜くこと。フランス語の“切り抜く”( Découper )という動詞からきた言葉。一般には、子供の切り抜き絵のことを指す。この手法を美術作品にはじめて用いたのはH・マティスである。彼はすでに1930年代から切り紙絵(パピエ・デクペ)を大作や舞台美術のマケット(雛形)づくりのために利用していたが、ステンシル版画集
《ジャズ》(1947)のマケットと、彼の仕事の集大成とも言われるヴァンスのロザリオ礼拝堂(1948−51)のマケットのいくつかをデクパージュで制作したのをきっかけに、晩年はもっぱら切り紙絵に専念するようになった。マティスが切り紙絵に向かった理由に肉体的衰えも要因のひとつとして挙げられようが、むしろ彼が生涯にわたって追求した問題、すなわち二次元性と三次元性、形と色彩の統合を切り紙絵に見出したと考えるほうが順当だろう。また、工芸美術におけるデクパージュは「紙に印刷された絵や図版を切り抜いて支持体に貼りつける」技法のことで、18世紀からの古い伝統を持っている。切り取ったプリントをそのまま使用するという点からすれば、T・ウェッセルマンの《グレート・アメリカン・ヌードno.44》(1963)に貼り付けられたA・ルノワールの絵画(印刷)は、工芸的デクパージュの一例と言えるだろう。
(岸弥生)
関連URL
●マティス http://www.artloft.com/matisse.htm
●ウェッセルマン http://karaart.com/wesselmann/works.html
|