エスキースとは、油彩の完成作品に対する準備段階の仕事のうち、通常は、完成作品よりも小さなフォーマットにおいての下描きであり、芸術家が最初に抱いた感情や着想をとどめ、それらを理解し探求する手段として用いられる。エスキースが芸術家の想像力から生まれた自発的なインスピレーションの結果であり、そのインスピレーションに秩序を与え、画面に芸術家の創意を実現していくのに対して、エチュードは、風景や人物などのモデルからの自然観察によってなされた、光の効果を考慮したデッサンやスケッチである。例えば、歴史画や物語画の下描きとして、人物の配置や画面全体の構図を完成に導くのがエスキースであり、風景画の下描きはエチュードと言えよう。したがって、芸術家の想像力から生まれたエスキースは、自然観察からのエチュードよりも、より能動的な精神の働きが必要であると考えられている。
(安藤智子)
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