批評家R・クラウスが1978年の論文「展開されたフィールドにおける彫刻」で提示した図式の四項対立を可能にする、論理的な場を指す。彼女は先ず「風景」と「建築」の二項対立を想定し、モニュメントとしての機能の欠如、すなわち「無場所性(sitelessness)」によって自律したとするモダニズムの彫刻を、先の二項の条件から二重に疎外されたものとして、第三の項に位置させる。新たに定義、そして限定された「彫刻」の項に、今度は先の二項の条件を二重に満たす「場所―構築(site-construction)」という概念を対峙させ、ここに「彫刻/場所―構築」という新たな二項対立が生みだされる。またこの段階で、「風景」および「建築」の条件をどちらか一方だけ満たすものとしての新たな二組の対立が生じ、図式上この対立は「彫刻/場所−構築」の対立と直角に交叉する。クラウスが構造主義者あるいは数学者の手つきを模して作成したこの図式は、「彫刻」という語彙の再定義をめぐって展開するが、同時にそれは70年代の美術が、もはや形式主義的な弁別基準である「媒体において特有・限定的であること(medium
specificity)」の枠組みでは捉えられないという現状を告発するものであった。
(上崎千)
|