“外圧による表出”を意味する「表現」という概念の歴史的起源に関しては諸説あるが、G・ドゥルーズのスピノザ論やライプニッツ論に倣えば、おそらくバロック時代と考えるのが妥当であろう。美術において「表現主義」として語られるのは主に19世紀後半以降の動向だが、そもそも「表現」を意図しているはずの美術の特定の部分を、敢えて「表現主義」と二重に括るようになったのは、ある傾向の作家・作品に窺われる激しい感情の吐露・表出を、科学や実証性を重んじた「印象主義」と対置するためと考えてよい。代表的な作家としてはJ・アンソール、P・ゴーギャン、V・ゴッホらの名が挙げられるが、彼らの名は美術史的には「後期印象主義」へと組み入れられることが多い。「ドイツ表現主義」などさらに特定化されたカテゴリーが示すとおり、極めて多様な感情表出の形態は、「リージョナリズム」と結びついて地域性との関連で語られることもある。
(暮沢剛巳)
関連URL
●J・アンソール http://www.cel.sfsu.edu/MSP/inco/ART6.html
●V・ゴッホ http://www.vangoghgallery.com/
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