一般に「美学」「芸術学」というと、もっぱら視覚表象、それも美術を取り扱う学問だという先入観が広く流布しており、他の芸術領域を指示する場合には、「音楽美学」や「映像美学」などとあらかじめその指示範囲を特定することが多い。このことには、ディシプリンとしての美学がとりわけ美術史との並行関係で発展し、また認知心理学との分離によってその独立性を確保するようになった経緯が大きく影響している。「一般芸術学」とは、こうした領域間の分断を再統合して、美術のみならず音楽や文学、演劇や映像などを広く論じようとする立場のことであり、この概念の提唱者ウーティッツは、芸術に固有の原理を哲学的に解明しうる基礎を形成するための「一般芸術学」の必要を説いた。結果的に、「一般芸術学」は領域間の分断を解消する影響力は持ち得ず、その後の美学研究上ほとんど参照されなくなってしまったが、ある意味でこの立場は、近代美学の出発点とも呼ぶべきカントの『判断力批判』の中で既に示されていたものである。
(暮沢剛巳)
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