ひとつの色の面から他の異なった色の面の移行を緩かに行なう彩色法。トーンによる彩色法、つまりは、主題となるひとつの色を含み、他の幾つかの異なった色の面を総合する彩色法や、コントラスト(対照)による彩色法、幾つかの異なった色の面を、比較的独立した単位として互いに対立させる彩色法とは対立するものである。しかしながら、これらの彩色法は、必ずしも各々独立して用いられているということではなく、それらを折衷して用いることも可能である。例えば、大まかな色面の分割をコントラストによって行ない、グラデーションによって個々の色面を結合し、その色面をトーンで処理するということができる。例えばルノワールは、グラデーションの名手であると評されており、マティスはコントラストを、また青の時代のピカソはトーンという彩色法を多用していたと言えよう。
(安藤智子)
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