平安時代の木像の技法。1本の木材から仏像の全身を丸彫りした継ぎ目の無いものを言い、平安初期以前はほとんどこの方法であった。平安中期以降の寄木造と区別するための用語。完全な一木造りは、像の全体から台座まで1本の材で彫り出したものである。しかし、1材では大きな像や複雑な動きを示す像をつくれないし、木心があれば干割れも生じる。わずかな檀像をのぞけば、完全な一木造りが少ないのはそのためである。そこで、一木造りの基本的条件は、頭部と体部が1材から彫り出されることとし、体部から離れている手足や坐像の膝前、その他の小部分などが別材であっても一木造りと考えることになっている。奈良時代に木心乾漆が発達するとともに、材の干割れを防ぎ重量を軽くするために、木心のある部分をくりぬく内刳り(うちぐり)が一般化した。平安初期は一木造りの全盛期であるが、一木を内刳りによって蓋板や脊板をあて、また腕や膝前部分などを別材でつけることが一般的である。そして内刳りをして生じた空洞内に銘文を記したり、経巻、仏画、工芸品や関係者の遺品などを納入することも行なわれるようになった。内刳りは寄木造ほど深くはないので、像の表面を刻んで翻波式の美しい衣文を出すこともできた。遺品としては奈良末期から平安初期の仏像に多い。
(中島律子)
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