図像、あるいは図像学と訳される。「像の記述」を意味するギリシア語の「エイコノグラフィア」に由来している。ルネサンス時代には貨幣に打ち出された古代の肖像を同定することを指していた。19世紀キリスト教考古学によって学術的形象論として発展し、20世紀になると造形美術の主題と意味に関する研究全体を指すようになった。この研究方法はA・ヴァールブルクとE・マールにより、20世紀美術史研究の代表的方法論とされた。イコノグラフィは通常、宗教的イコノグラフィと世俗芸術のイコノグラフィに分けられ、マールは前者の研究に貢献した。世俗美術における象徴主義の研究はヴァールブルクとE・パノフスキーによりなされた。このような20世紀の造形芸術の方法論が目指すところは、ある歴史的状況下における個々の美術作品において、どのようにしてその主題が表現されたかを「類型」の歴史を辿り、思想とイメージの関連性の分析を作品ごとに行なうことによって理解しようと試みることである。
(山口美果)
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