デュッセルドルフのブローカーでコレクターのカール・ハインリヒ・ミュラーが自身のコレクションを公開するべく、1986年に同市近郊のホンブロイヒに開設した「総合芸術作品」としての「美術館島」。「自然と芸術の並行(Kunst
parallel zur Natur)」をモットーに、エルフト川沿いの農地に古代の湿地帯(これを非日常的異界=芸術の島[Insel]と見ている)を復元、風景に調和させて野外作品や芸術家のためのアトリエ、彫刻家エルヴィン・ヘーリヒによるミニマル彫刻状の展示パヴィリオンを点在させている。美的体験のみを目的としてパヴィリオンには照明、空調、監視員、タイトルカード・キャプションがほとんどなく、展示品(東洋の古代遺物と西欧の現代美術・工芸)の配置の時空間系列は交錯している。
開館以来2年ごとに現代音楽と文学のフェスティヴァルを開催しているほか、たびたび環境を拡張しており、95年には近隣の元軍用地にアーティスト・コロニーや音楽施設を開設した(また、周辺に生物物理学研究所と有機実験農場を誘致している)。これまで個人コレクターの「作品」として恣意的に展開されてきた施設だが、95年より地方自治体が参加した財団となり、作品の保存や教育活動の方針について今後の動向が注目される。
(三本松倫代)
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